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新型肺炎拡大でテレワークに注目 危機管理の目的で導入さらに加速へ

 新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け、企業が従業員に対して自宅のほか、普段働いているオフィス以外の場所で働く「テレワーク」を推奨する動きが出てきた。働き方改革や東京五輪・パラリンピック時の交通混雑緩和などの観点から導入が広がっていたが、新型肺炎という危機管理要素が加わり、今後は導入加速が見込まれる。

 日本たばこ産業(JT)は1月27日付で国内全社員約7500人を対象に、テレワークを推奨する通知を出した。同社は2017年からテレワークを導入しているが、今回、原則として週2日だった利用回数の上限を外した。担当者は「情勢の変化に合わせて、しかるべき対応を行った」と話す。

 ITのGMOインターネットグループも同日から中国人観光客が多い渋谷(東京)、大阪、福岡の3拠点の従業員に2週間のテレワークを命じた。対象は約4000人と社員の約9割に及ぶ。野村ホールディングスは1月15日以降に中国本土から帰国した社員は症状の有無に関係なく、中国出国日から14日間は在宅勤務としている。

 人材派遣大手のパソナは派遣先などの契約企業が社員に在宅勤務を実施する場合、パソナからのスタッフにも適用させるよう、2月3日から順次、契約企業に要請を始めた。

 感染拡大は少数精鋭のベンチャー企業にとっては命取りとなりかねない。音楽投稿・販売サイト「オーディオストック」運営のクレオフーガ(岡山市)は、岡山本社と東京オフィス2拠点の全従業員に在宅勤務を実施。西尾周一郎社長は「個人の専門性が高く、誰が欠けても影響が出る」と危機感をあらわにする。

 総務省の調査によると、国内企業におけるテレワークの導入比率(18年)は19.1%で、約9割の米国などに水を開けられている。ただ、テレワークを導入する動機については「生産性の向上」などのほかに、「非常時(地震や新型インフルエンザなど)の事業継続」との回答が約15%あった。

 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「今回の新型肺炎もテレワーク導入を後押しする可能性がある」と指摘する。

 導入検討の動きも進む。東京都内の中小・ベンチャー企業30社による「TDMテレワーク実行委員会」は1月27日、テレワークの導入検討企業に対する合同体験会を開催、親子連れなど35人が自社に出勤せずに会場で業務を行った。新型肺炎対策のディスカッションも実施したが、新たな参加企業が3社あった。

 実行委員会の事務局を務めるアステリアの長沼史宏広報・IR室長は「事業継続は平時からいかに体制を整えるかが大事。東京五輪に加え、今回の新型肺炎もあって企業の導入意欲が高まっている」と話す。

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