新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、中国では多くの地域で春節(旧正月)が明けても工場の操業などの経済活動が事実上停止したままだ。現地に工場を構える日本メーカーの間では、生産停止の長期化もにらんで他国での代替生産を検討する動きが広がっている。
春節休暇が明けた3日以降も中国で休業を続けているパナソニックは代替生産の準備を進めており、シャープの野村勝明副社長も4日の決算会見で、影響が長期化すれば、代替生産を検討する考えを示した。
中国で生産する部品は中国外で使われるものもあり、アイシン精機の福重友治経理部長は先週末の記者会見で「中国が止まってもよその地域は動いている。現在(代替生産する)品目を洗い出している」と述べた。同社は主に日本への生産振り替えを検討している。
トヨタ紡織も自動車のシートカバーに関し「操業を再開しても物流がきちんと機能するかなどの懸念もある」として、日本やタイに生産を切り替える検討に入った。
エアコン大手、富士通ゼネラル幹部は「(交通寸断で)従業員が帰ってくるかどうか不安がある」と話し、労働力を十分に確保できない場合はタイでの代替生産も検討すると明かす。
SBI証券の遠藤功治企業調査部長は「中国で作っている部品は日本などでも生産可能なものが多いが、生産を移した場合、コストの大幅な上昇は避けられない」と指摘。販売の落ち込みも含めた影響の全体像は、経済活動が正常化する時期にかかっており「全く分からない」と話す。
中国では現在、肺炎の感染者が集中する武漢だけでなく、北京や上海でも在宅勤務や休業を当局が求めている。このため、武漢には拠点のないトヨタ自動車も中国での生産再開を10日以降とするなど、生産停止が長引いており、再開時期も不透明だ。