主張

楽天に公取委検査 出店者と共存共栄めざせ

 インターネット通販の「楽天市場」を運営する楽天に対し、公正取引委員会が立ち入り検査に入った。同社は楽天市場に出店する事業者に対し、一定額以上の商品の送料を実質的に無料にするよう求めている。これが独占禁止法に抵触しないかどうかを調査する。

 送料無料化は3月中旬から始めるが、公取委は違反を確認すれば、開始前でも違反行為をやめさせる排除命令などを出す見通しだ。これに対して楽天は「法令上の違反はない」とし、三木谷浩史会長兼社長は13日、予定通り実施する考えを表明した。

 これまで有料だった送料が無料化されれば、利用者の利便性は大きく向上する。一方で出店者がその送料をすべて負担すれば、不利益を被ることになる。楽天と出店者の主張は対立したままだ。

 重要なのは利用者を増やし、両者が共存共栄を目指すことであるはずだ。信頼関係を築けなければ、楽天が主張するように米アマゾン・コムに対抗することもできまい。楽天に問われているのは、出店者に負担を一方的に押しつけるのではなく、広く理解を得られるような知恵である。

 1店あたりで合計3980円以上の商品を買えば、送料を無料にする。楽天は「送料無料」という表現を「送料込み」に改めるというが、店側が送料分を上乗せした価格設定にしないかぎり、送料が店側の負担となることに変わりはない。公取委はこれが独禁法の禁じる「優越的地位の乱用」にあたらないかを調べる。

 全国で配送網を整備して直接販売・配達を手掛けるアマゾンに対し、楽天は主に出店者が配送を行っている。アマゾンでは2千円以上の商品を買えば送料は無料だが、楽天は事業者によって送料が異なるなど、利用者から分かりにくいと指摘されてきた。

 ただ、楽天市場の出店者は地方の中小企業が多く、送料負担は大きい。楽天との対立が深まれば、全国の商品を幅広くそろえる魅力も損なわれかねない。

 楽天には昨年、自社の旅行予約サイトに載せる宿泊料を一番安くするようホテル側に求めたことが公取委の調査を受け、自主改善した経緯もある。「プラットフォーマー」と呼ばれるネット事業者には世界的に規制の動きが強まっている。この流れにも留意してサービス向上に努めるべきだ。

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