ビジネス対話アプリの米Slack(スラック)は、年内にもデータレジデンシー(データ保存)機能を日本国内に完備する見込みだ。日本企業にとっては、重要な顧客データを国内で管理できるようになり、サービスを利用しやすくなる。スラックの共同創業者であるカル・ヘンダーソンCTO(最高技術責任者)に、製品の強みや今後の展開について聞いた。
スラックは、働き方改革の一環として職場以外で働く「テレワーク」や「ワークライフバランス」(仕事と生活との調和)を推進する重要なツールになるとみて、昨年11月には、大阪オフィスを開設するなど、国内向けの支援を拡充している。
データレジデンシー機能の対象となるのは、スラック上でやりとりしたメッセージやファイルなど。転送や保存する際には、暗号化することでセキュリティーを強化する。
スラックは2017年11月に日本語版を発売。ヘンダーソン氏は「パソコンやスマートフォンを利用して国内外の2000以上のアプリと連携・連動することで、仕事の効率性を高めることができる」と話す。
スラックでは、「チャンネル」と呼ばれる、メッセージ、ツール、ファイルを一つに集めて共有する場所で、プロジェクトやチームごとでのオープンなコミュニケーションが可能だ。メールに比べて気軽に意見を言い合えるのが特長。会議資料や動画、予定なども共有できる。現在、世界150カ国以上でサービスを展開し、世界における有料プランの利用企業数は15万社以上ある(19年10月現在)。日本は、米国に次いで2番目に利用企業数が多く、今年1月には日間アクティブユーザー数が100万人を超えた。
スラックのデータレジデンシー機能は、米国やフランス、ドイツなどでは既に展開しており、ヘンダーソン氏は「日本に導入することで、厳格な顧客データ管理が必要な官公庁や金融機関でもスラックのサービスを活用できる環境が整う」と期待する。
ただ、日本のビジネス現場ではチャットよりメールが主流だ。ヘンダーソン氏は「IT化や自動化に伴い、ビジネスの現場が大変複雑になっている。コミュニケーション性や協調性がより求められており、個人がそれぞれ情報を管理するメールではなく、社内の部門ごとに情報を同じツールで管理できるスラックの方が有利だ」と指摘している。