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新型肺炎、供給停滞で企業暗雲 労使交渉・賃上げにも逆風

 国内企業は、新型コロナウイルスによる新型肺炎の拡大が、企業活動や消費の停滞を引き起こし、2020年1~3月期もマイナス成長になることへの懸念を強めている。

 東京商工会議所が17日開いた新型肺炎に関連した資金繰り相談会には76社の中小企業が参加した。先週末の締め切り時点では48社の予定だったが、国内での感染拡大が報じられる中、28社が急遽(きゅうきょ)参加を決めた。

 相談会ではサプライチェーン寸断による経営者の悲痛な声も聞かれた。東京都中央区の電子部品メーカーの経営者は「部品の委託生産先の中国の工場が停止し、取引先の国内大手メーカーに納品できない。納品はいつかとの催促も厳しく、このままだと手元資金が枯渇する」と不安を打ち明けた。

 中国からの部品供給停滞で、日産自動車は主力子会社である日産自動車九州(福岡県苅田町)で今月14日、17日、24日の3日間、生産を停止。日本ペイントホールディングスでは、中国の自動車工場が減産を継続するため、供給する塗料の稼働率を落とさざるを得なくなった。

 消費も冷え込んでいる。大手百貨店は中国からの春節休暇を利用した多くの観光客を見込み、売り上げ増を想定していたが、新型肺炎で急ブレーキがかかった。1月度売上高(既存店ベース)は三越伊勢丹、高島屋、大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店、近鉄百貨店などが軒並み前年割れ。ホテルも中国人客を中心に2月だけでなく3月のキャンセルも相次いでいる。

 こうした状況が業績にも影響を及ぼし始めている。東京五輪・パラリンピックを追い風に、20年12月期は増益を見込んでいたスポーツ用品大手のアシックスは、営業利益が前期比15.4%減になるとした。広田康人社長は「中国国内の販売が減り、日本でもインバウンド消費に影響が出ている」と憂慮する。問題がいつ収束するのかわからない中、日本ペイントは12月期の業績予想の公表を延期した。

 自動車総連の高倉明会長は「生産面が気がかりで、一時金に影響してくる」と労使交渉や賃上げにも新型肺炎が逆風になる可能性を指摘している。

 新型コロナウイルスの感染拡大による企業への影響

 ≪サプライチェーン≫

 ・東芝

  中国の約20拠点の製造拠点のうち、正常に稼働できているのは5拠点程度。一部従業員は出勤できていない

 ・日産自動車

  中国からの部品供給の停滞により、日本国内の子会社3工場を一時停止

 ・ホンダ

  中国での生産停滞が長期化した場合は影響が出る可能性

 ・ヤマハ発動機

  中国からの部品供給の停滞が続けば、世界各地の拠点で3月上旬から順次部品が切れる

 ≪業績≫

 ・日立製作所

  米中貿易摩擦や自動車需要の回復が鈍い中、新型コロナウイルスの影響で不透明感が高まる

 ・日本ペイントホールディングス

  2020年12月期通期業績予想の発表を延期

 ・資生堂

  20年12月期は売上高、最終利益とも過去最高の更新を目指すが、新型肺炎の影響は織り込まず

 ・アシックス

  新型コロナウイルスの感染拡大で、20年12月期は営業利益見通しを前期比15.4%減の90億円と発表

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