金融

「安全通貨」揺らぐ 為替市場で円売り加速 新型肺炎や景気に懸念 10カ月ぶり円安水準 

 外国為替市場の「安全通貨」とされる円の立ち位置が揺らいでいる。これまで有事には投資家の資金が流入して円高を招いたが、足元ではむしろ「リスク通貨」として売り込まれ、円安になっているためだ。消費税増税後の景気低迷や、新型コロナウイルスの感染拡大への警戒感から、市場では日本経済の先行きに厳しい見方が強まっている。

 20日のニューヨーク外国為替市場の円相場では円を売ってドルを買う取引が優勢となり、一時1ドル=112円23銭と昨年4月下旬以来、約10カ月ぶりの水準まで円安ドル高が進んだ。21日の東京市場でも112円近辺で取引された。

 外国為替市場では、投資家のリスク回避姿勢が強まると円買い、弱まるとドル買い方向になる流れが定着してきた。だが、最近は新型肺炎の影響をあまり受けておらず堅調な米経済と、悲観的な見方が強い日本経済が対比され、ドルが安全通貨として買われている。

 令和元年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率6・3%減の大幅なマイナス成長だったのに加え、新型肺炎の影響で2年1~3月期も停滞が避けられない。大和総研は21日公表した経済予測で、2年暦年の成長率は新型肺炎の流行が3カ月程度で収まった場合でも0・1%減のマイナス成長になり、流行が1年程度続いた場合は1・0%減までマイナス幅が拡大すると試算している。

 政府は2月の月例経済報告で景気が「緩やかに回復している」との見方を維持したが、市場では景気後退入り観測が広がり、投機的な円売りドル買いを招いた。

 一方、円安は輸出企業にとって業績押し上げ要因で、21日の東京株式市場では日経平均株価が一時100円超上昇した。「円売りが日本売りなら日本株が買われるのは矛盾している」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)との指摘もある。

 ただ悲観が行き過ぎだとしても、円安が目立てば貿易赤字と貿易相手国の通貨安誘導を問題視するトランプ米政権が11月の大統領選を前に圧力をかけてくる恐れもある。急激な円安はしばらく注目を集めそうだ。(田辺裕晶)

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