中小企業へのエール

ベトナムとカンボジア 一発逆転思考、ビジネスの参考に

 □京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一

 日本企業は、廉価で優秀な労働力を求めて、中国やタイなどに進出してきた。しかしその結果、賃金は急上昇し、もはや桃源郷とはいえなくなっている。そうした中、今注目されているのが「ベトナム」と「カンボジア」である。

 ベトナムは、人口9000万人を超える東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国だ。その歴史は、千年以上も中華帝国の朝貢国として、漢字(だけ)を使い統治された時代があった。その支配から解き放ち、植民地としたのが19世紀のフランスだ。漢字から、アッという間にアルファベットが文字表記となった。

 そして、インドシナ半島での存在感を一気に高めたのが、米国とのベトナム戦争である。常勝米国に唯一勝利した国として、国民は大きな自信をもっている。

 一方のカンボジア。人口は約1600万人。この国の魅力は、地理的位置と人口構成である。タイとベトナムをつなぐハイウエーの中間に位置し、ASEAN単一市場によりその経済回廊効果で、カンボジアの魅力は一気に高まった。

 その歴史は、インドシナ半島を長く支配し、アンコールワットを築造したクメール人の末裔(まつえい)で、いまだにサンスクリット語に似た文字を使う。カンボジア内戦の影響で極端に若い人口構成となり、生産年齢人口が65%というエネルギッシュで、自信に満ちあふれている国だ。

 そして、通貨。ベトナムドンは、日本円の200分の1。自国通貨のみ、基本的に1000ドン(約5円)以上の紙幣を発行流通させている。カンボジアはリエルが存在するが、米ドルを自国通貨のように流通させ、持ち込み持ち出しも完全に自由である。

 両国に共通するのは、スマートフォンの普及にともない、若者を中心に電子決済アプリの利用が、屋台から配車サービスにいたるまで急速に進んでいることだ。外国人旅行客にとって、旅先での移動は不安の一つ。

 だが米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズのアジア版「Grab(グラブ)」を使えば、目的地まで最短ルートで安心して向かうことができ、料金面でのトラブル回避にもなる。

 カンボジアの「トゥクトゥク」でさえもグーグルマップで呼ぶことができるのだ。両国を行き来すると、似て非なるものも感じる。共産主義が支配するベトナムの“段階的発展”と、民主選挙での安定独裁によるカンボジアの“捨て身の発展”。しがらみにがんじがらめになっている日本から見ると、カンボジアのような国の一発逆転思考がビジネスにも大いに参考になる。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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