講師のホンネ

生徒の「分からない」は大チャンス 伊豆はるか

 小3男子の母親から相談を受けた。授業で先生が一通り説明した後、息子が分からないところを質問すると、「それは今説明した」と取り合ってもらえない。何度か質問を重ねると、しつこいと怒られ、結局息子は質問すること自体をあきらめてしまった。先生の話を一発で理解する必要はあるのか。この相談を受け、過去の自分と重ねた。

 子供の頃、私は疑問を持ったまま引き下がれるタイプではなかった。なぜそれをするべきなのか。なぜそれをしてはだめなのか。先生に質問するたびに嫌な顔をされたが、納得できないことは放っておけない。大抵、理不尽に怒られるか、避けられるかのどちらかになった。

 そんな中、私のどんな質問にも嫌な顔をせず向き合ってくれる先生がいた。私が納得するまで、言葉を換え、例を挙げ、あの手この手で説明してくれた。その先生と議論するたびに、私は自分の固定概念に気づき、新しい考え方を理解した。

 先生の仕事というのは、難しいことを分かりやすく説明することではないだろうか。難しいことを難しいまま話すことは誰にだってできる。哲学書やことわざ辞典をただ与えるだけなら、先生はいらなくなってしまう。生徒が分からない時こそ、先生の存在意義が生まれる。先生には、生徒の理解力が低いと判断する前に、自分の教え方と向き合ってほしい。そして、「分からない」は、教える側と教わる側の双方にとって最大のチャンスだ。分からないときこそ、飛躍的に伸びる決定的なタイミングだからだ。

 生徒が自分の頭で考え問題に取り組もうとしている。ここで「もう教えた」「しつこい」などと突き放してはもったいない。ここぞとばかりに、もっと分かりやすい説明はないか、もっと工夫できないか、頭をひねって考えるときだ。学校の先生に限らず、上司や親など、誰かに何かを教える立場にある人は、部下や子供の「分からない」の大チャンスをつぶすのではなく、何としてでも生かしてほしい。教えることで相手の人生に与えられる影響と、そこから得られる喜びは大きい。子供たちが「分からない」と訴えてくるたび、私はかつての恩師の顔を思い出す。また一つ成長するチャンスを与えられたことに感謝しながら。

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【プロフィル】伊豆はるか

 いず・はるか 兵庫県出身、精神科医・3児の母。慶大在学中に会社を設立し、塾や飲食店を経営。社長業の傍ら医学部入学。33歳で医師免許を取得。現在は精神科医・訪問診療医として働きながら、女性の新しい生き方を提案する「マルチライフプロジェクト」を主宰。現実的かつ具体的手法で女性を導く講座は毎回満席。

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