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富士ゼロックス、課題は提携解消後の新ブランド確立

 富士フイルムホールディングス(HD)子会社の富士ゼロックスと米ゼロックスの関係は60年近くにわたる。富士ゼロックスは1962年、富士写真フイルム(当時)とゼロックス傘下のランク・ゼロックス(同)との折半出資の合弁会社として設立され、2001年にはゼロックスが業績不振から保有株の半分を富士写に売却。その後、富士フイルムHDが18年1月に世界戦略強化の一環でゼロックス買収を発表したが、ゼロックスが大株主の意向から反対に転じ、法廷闘争にまで発展した。最終的に19年11月、富士フイルムHDがゼロックス保有の富士ゼロックス株を全て買い取ることで決着した。

 富士フイルムHDによる完全子会社化に伴い、富士ゼロックスは今年1月、ゼロックスと5年ごとに更新してきた提携の契約を21年3月末をもって打ち切ると発表。提携解消後は欧米市場での販売が可能になるほか、年間約100億円のブランド使用料の負担もなくせる。ゼロックスとは、別に5年間の相手先ブランドによる生産(OEM)供給の契約を結んでおり、生産台数の急減に悩まされることもないという。

 一方、一番の懸念が「ゼロックス」の名前が使えなくなることだ。社名は21年4月1日付で「富士フイルムビジネスイノベーション」に変更。23年3月末までの2年間は暫定的に「富士ゼロックス」ブランドをアジア太平洋市場で独占使用できるものの、「ゼロックス」に代わる新たなブランド名を早急に確立する必要がある。

 欧米ではコピーすることを「ゼロックスする」というほど「ゼロックス」ブランドが根強い。競合他社の幹部は「成熟市場の欧米に新ブランドで参入するのは富士といえども容易ではない」と指摘する。“独り立ち”への移行期間に新ブランドを浸透させることが成功へのカギを握る。(桑原雄尚)

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