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長崎でIT拠点誘致が活発 8社と協定、造船苦戦で構造転換

 富士フイルムや、京セラの傘下企業など長崎県でIT関連拠点の設置を決め、立地協定を昨年結んだ企業は8社に上って注目を浴びている。自治体の補助金や人材確保への支援が功を奏し、ゼンリンも開設を今年2月に発表。三菱重工業が長崎市内の主力工場の売却を検討するなど基幹の造船業が苦戦する中、産業構造を転換して雇用を創出し、若者をつなぎ留めることが期待されている。

 求人経費の50%助成

 「地方で優秀な人材を確保したかった。首都圏だと難しい」。長崎市に拠点を昨年10月に開設した業務系システム開発のニーズウェルの石川和典経営企画室長は進出の意義を強調する。同社が東京以外に事業所を構えるのは初めてだ。

 県は進出企業の獲得強化に向け、通信費や賃借料などを補助。立地協定の締結から5年間で1000万円を上限に求人情報の発信経費の50%を助成する。さらに人手不足に対応するため、県の外郭団体が企業と大学の間に入って採用を支援する。

 情報データで新学部

 長崎大が今年4月に情報データ科学部を新設し、長崎県立大にも情報システム学部があり、人材の供給源となる。子会社が研究開発拠点設置を決めた京セラの谷本秀夫社長は「高度なIT技術を持つ長崎の新卒学生の採用を通じ、体制強化を図る」と意気込む。

 立地協定を昨年結んだ8社のうち富士フイルムは昨年3月に拠点を設け、今年4月には富士フイルムソフトウエア(横浜市)、自動車部品大手デンソー子会社のデンソーウェーブ(愛知県阿久比町)、物流大手セイノーホールディングス傘下のセイノー情報サービス(岐阜県大垣市)などが開設を予定している。

 4月に開設を計画しているゼンリンを含めた9社合計の人員規模は300人超となる見込みだ。

 「基幹産業に育てる」

 長崎県の中村法道知事は相次ぐ進出を歓迎し、「産業構造を変え、基幹産業として育てる必要がある」と力説する。背景には三菱重工が主力の香焼工場(長崎市)の売却を検討するなど、地域経済を長年牽引(けんいん)してきた造船業が低迷していることへの危機感がある。

 特に若年層の福岡県や東京圏などへの流出を食い止めるのも喫緊の課題だ。総務省によると、長崎県は19年に7309人の転出超過となり、都道府県別で広島県、茨城県に次ぐワースト3位だ。

 長崎県などは今年1月に進出企業と地元企業の交流会も開いた。中村知事は進出企業の拡大に向け「いかに具体的な成果を上げてもらえるかが極めて重要だ」と訴えている。

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