日産自動車が、東日本大震災の壊滅的な被害から再生しつつある宮城県山元町のイチゴ農家の支援に本腰を入れている。ハウス内の収穫作業用に、イチゴを傷つけず搬送できる特殊な台車を作って提供するなど、自動車工場で培った細やかな工夫が被災地の農業再生に一役買っている。
日産の取り組みは、農業と製造業の連携を進める農林水産省の助成事業の一環。日産が支援するのは山元町の農業生産法人「GRA」。ハウス栽培で高級イチゴを生産している。山元町は東北有数のイチゴの産地だが、震災で当時約130軒あった生産者のほとんどが被災した。
日産は自動車工場に導入している、簡易な装置を使って製造作業を効率化する技法をイチゴ栽培に応用。ハウスの栽培棚に設置したレールに、移動時の振動が少なくなるよう工夫した台車を取り付け、摘み取ったイチゴをそこに載せて運ぶ装置を考案した。従来の押し車で運ぶやり方と異なり、振動で果肉同士がぶつかるなどして傷つくことが大幅に減った。
ハウスと選果場を行き来する冷蔵車として電気自動車(EV)も提供した。収穫後すぐ冷やすことで実が締まり、おいしくなるという。日産の担当者は「車づくりの中で受け継がれてきた知恵を違う分野にも生かしていきたい」と話している。