高論卓説

企業の存続を危うくする場合もあるSNS 無秩序な情報拡散への向き合い方

 風評の破壊力はすさまじい。日常生活で必要なものが手に入らなくなるかもしれない、という不安感をあおられるのだろう。過去に同じような経験をした記憶がよみがえり、合理的ではないと分かっていても行動してしまう。

 インターネット上では多くの情報が無秩序に流れる。情報量が多いのはいいのだが、問題はそれが真実かどうかだ。臆測などの誤った情報が猛スピードで拡散してインフォデミック(情報の流行)となれば、悪影響が広範囲におよびパニックを呼ぶ。「情報を受け取って判断する側に、精査して選別する力が必要」と言われる。だが情報が拡散し、店舗での様子を見てしまうと正確性を確かめる時間や余裕などなくなる。「情報が正確かどうか分からないが、とりあえず行動しておこう」と判断してしまうのだ。

 結局のところ対策としては、常日頃から万が一のことを考えた準備を進めて緊急時に慌てないようにする、ということに尽きる。有事に備えて水などのストックが十分なのか、万が一の集合場所はどこか、などをどこかのタイミングでは決めていたはずだ。だが、子供が成長したり住む場所が変わったりなどして時間の経過につれてたがが緩む。

 災害が起きた際の情報源としてSNS(会員制交流サイト)は有効だ。日常でも電車の遅延状況や道路の渋滞情報なども、SNSを見た方が早く分かることもある。だが、真実と同時にデマも拡散速度が速い。「そんなはずはないだろう」と思うことに対しても過敏に反応してしまう。

 企業でも、SNSの情報には気を使っている。顧客の声を収集・分析して、新商品開発やマーケティングに生かす取り組みがなされる。それに加えて、企業を守るという視点で、SNS上での誤情報や誹謗(ひぼう)中傷を確認することは欠かせない。いたずら動画などは論外だが、業界や顧客、店舗などでネガティブな動きがないかを知るための有効な手段となる。

 人間が24時間365日眺めているわけにはいかない。そのため、SNSへの投稿をシステムが監視するサービスも多く出ている。薬業界では、SNSでの投稿が法令に抵触していないかをチェックするサービスも始められている。企業だけではなく、個人向けにもこういったサービスが有効かもしれない。大きな社会問題が発生した場合、怪しい情報にはアラートを鳴らし、いち早く正確な情報を流して、落ち着いた行動を促すことが有効になる。

 多くの企業では新入社員を迎え入れる時期となった。学生だった頃は、気軽にSNSを使っていたかもしれない。だが、企業活動の中では同じようにはいかない。場合によっては企業の存続を危うくすることにもなりかねない。求職者が過去にどのようなSNSの使い方をしていたのかを調べるサービスも提供されている。面接だけでは求職者の内面を見抜くことはできないので補完情報として使う。どのような使い方をされるのかは定かではないが、米国入国のビザ申請書には「SNSアカウントを申告する項目」が追加になった。

 正確な情報を収集・精査する態勢をつくり、しかるべき手を打つ。経営層はもとより、現場担当者や主要組織のリーダーも、現状を迅速に知るための仕組みが必要だ。企業によっては人事異動の季節でもある。それぞれの部署のリーダーも交代となる。個々人のモラル向上が最も重要であることは言うまでもないが、チェック体制についての指導を改めて徹底する必要がある。

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【プロフィル】小塚裕史

 こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、2019年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタル・トランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。

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