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中韓重視が裏目で関空閑散 新型コロナ拡大で国際線8割欠航

 アジアに近い地理特性を生かし、格安航空会社(LCC)による中国や韓国などへの就航拡大で利用者数を右肩上がりで増やしてきた関西空港の経営戦略が、新型コロナウイルスの感染拡大で裏目に出ている。政府による中韓からの入国制限強化に加え、航空各社は他地域との間を結ぶ国際線も縮小。国際線全体の8割近くが欠航する事態となった。

 普段は多くの旅行客でにぎわう国際線の到着ロビー。9日に政府が入国制限を開始して以降、行き交う人は数えるほどしかいない。空港内の多くの店舗前には営業時間の短縮を知らせる紙が張られていた。

 当初計画していた16日から1週間の1422便の国際線のうち、中国本土と韓国発着の便がLCCを中心に計850便に上る。この96%が欠航となった。欧州や東南アジアなどの便にも影響は及び、成田空港便を残して関空便の運航を取りやめた航空会社もある。

 例年3月は春休みや企業の人事異動の時期と重なる繁忙期だ。航空会社の関係者は「この時期に飛行機が飛ばせないのは、かなりの痛手だ」とこぼす。関空を運営する関西エアポートは29日からの夏ダイヤ編成もままならない状況で、担当者は「利用者の落ち込みは中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時を上回るかもしれない」と不安をあらわにする。

 将来の需要増を前提にした発着枠の拡大議論の行方も不透明となっている。大阪府の吉村洋文知事は現在の年23万回から30万回に引き上げる目標を示しているが、府関係者は「長い目で見れば需要は戻るだろうが、どれくらいかかるか分からない。特に今後1、2年の予測の修正が必要になるのでは」と語る。

 空港運営に詳しい関西学院大の野村宗訓教授(公益企業論)は「流行が終息しても観光目的の訪日客が戻るには時間がかかるだろう。成長を維持するには企業への利用呼び掛けやビジネス機の誘致など、LCC中心の戦略からの脱却が必要だ」と指摘した。

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