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ユニコーン11社上場の成果も 中小機構、ファンド出資先が300件超

 中小企業基盤整備機構(中小機構)のファンド出資事業が軌道に乗り出した。中小機構から民間の中小ベンチャーファンドへの出資先は累計で300件を超えた。出資先のファンドからはクラウド名刺管理のSansan(サンサン)などが新規株式公開(IPO)を果たすなど、一定の成果を上げている。同事業は2015年度に黒字転換し、18年度には累積赤字を解消。20年度は6年連続で黒字を確保する見通しだ。

 損益が大幅に改善した要因は、時価総額の大きいベンチャー企業の上場が相次いだこと。出資先のファンドからは、Sansanをはじめ、バイオベンチャーのペプチドリーム、フィンテックベンチャーのマネーフォワード、求人サイト運営のディップ、フリーマーケットアプリのメルカリなど、時価総額1000億円超の「ユニコーン」と呼ばれるベンチャー企業11社がIPOを果たした。株式売却益を得た各ファンドからの分配金が増え、中小機構は18年度にファンド出資事業の累積赤字を一掃した。

 東証マザーズなどの新興企業向け市場に上場したベンチャー企業の約2割が、中小機構が出資したベンチャーファンドの投資先。中小機構が間接的にベンチャー企業に出資している形だ。中小機構によるベンチャーファンドへの出資先は1月末時点で302件。このうちベンチャー企業への投資を目的としたベンチャーファンドは200件に達する。

 中小機構による出資ファンドの種別は3つ。設立5年未満の中小企業を投資先とする「起業支援ファンド」、事業承継やIPOを目的とした「中小企業成長支援ファンド」、そして事業再生を目的とした「中小企業再生ファンド」がある。起業支援ファンドと中小企業成長支援ファンドによる中小企業への出資比率は投資総額の35~70%、中小企業再生ファンドは70%以上としている。

 昨年11月末時点の中小機構によるファンドの出資先は累計297件、出資約束額は4553億円。出資先ファンドからの投資先は延べ5678社で、そのうち225社が上場した。

 01年のITバブル崩壊、08年のリーマン・ショックで、投資マネーが市場から一気に消えた時期があった。さらに日本はもともとベンチャー投資に対して保守的な傾向が強く、超低金利下でもベンチャー企業への投資があまり進んでいない。

 日本のベンチャーキャピタル投資額は18年度2778億円。米国の約2%、中国の約8%にすぎない。「ベンチャー投資への呼び水」という中小機構のファンド事業の存在意義は当面、失われることはなさそうだ。

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