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やまま満寿多園 静岡で茶業150年、輸出にも注力

 □やまま満寿多園社長・増田剛巳さん(66)

 --静岡県で茶づくりを営む

 「遠州地方(県西部)の牧之原台地で、明治時代初頭の1870年から150年、茶業を続けている。私は5代目にあたり、茶の生産から製造、販売までを一貫して展開している。牧之原台地は明治維新後に、旧士族や、大井川の渡船が認められたことで仕事を失った川越人足などが開拓を進めた。私の祖先はもともと、この地で田畑を耕していた。1982年に法人化し、今日に至っている」

 --91年からは海外への茶の輸出にも乗り出した

 「ある取引先企業が米国に自社製品を売り込もうとしていて、当社に『一緒にやらないか』と誘いをかけてきたのがきっかけだ。当時、国内市場はペットボトル入りのお茶の台頭などで茶の消費動向が変わりつつあった。その取引先企業が持つ販路への相乗りに加え、当社でも海外の顧客と直接取引し、輸出拡大に取り組んできた」

 --輸出を始めてから30年近くだが、現在の姿は

 「売上高の約6割、取扱量の約8割を輸出が占める。輸出先も、北米やアジア、欧州などの約30カ国・地域に達した。海外の顧客の要求水準に応えられる製品を提供できていると自負している。また、当社は2015年に第54回農林水産祭で最高賞の『天皇杯』を、19年の第73回全国茶品評会では農林水産大臣賞を受賞した。こうしたことも海外の顧客からの信用につながっていると思う」

 --東京電力福島第1原発事故後に海外で導入された日本産食品の輸入規制は20カ国・地域で続いている

 「影響は当然ある。例えば、台湾は当社の主な輸出先の一つだが、静岡県産の茶を輸出するには、検査機関が発行する放射性物質の検査報告書が必要だ。検体を検査機関に送ったり、書類を用意したりと、大変な手間だ。原発事故から9年がたつ中でもこうした負担をしなければ輸出できない国・地域がある現実を分かってほしい」

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【プロフィル】増田剛巳

 ますだ・つよみ さまざまな職種を経験した後、明治時代初頭からの家業である茶業を手伝うようになった。1982年に法人化した「やまま満寿多園」で専務をへて、2001年から社長。静岡県御前崎市出身。

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