遊技産業の視点 Weekly View

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表 LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 ■「大衆娯楽」と呼ばれるゆえんを明確に

 遊技業界では現在、産業および企業の社会的責任を果たすべく、遊技への依存に対する取り組みを拡充している。この一環として、2018年2月には改正風営法が施行され、遊技機における射幸性の大幅な抑制が図られた。しかしながら、射幸性を抑えることが遊技への依存防止に効果的であるというエビデンスはない。

 だが業界は、この改正を受け入れ、新基準のもとで開発された新規則機への入れ替えを粛々と進めている。台数は今後の入れ替え分だけでも約270万台に上る。

 そのような状況で、遊技機メーカーは新規則機開発に精力的に取り組み、保通協の型式試験に持ち込んでいる。だがその適合率は、保通協が3月2日に発表した2月の型式試験状況を見てもパチンコ機が約39.3%、パチスロ機が約25.3%と極めて低い。新たな条件における開発への試行錯誤が見て取れる数値だが、型式試験への度重なる申請費用を含めた開発費の上昇も想像に難くない。それでも、遊技機メーカーはゲーム性の拡充を図ることで、ファンにとってより魅力的な遊技機の市場投入に余念がない。

 たとえば、パチンコメーカーの組合である日工組では遊技へののめり込み対策(依存防止対策)の一環として、通常時に規定回数まで大当たりしなかった場合に時短に突入する新システム「遊タイム」を搭載したパチンコ機の開発に着手。4月1日以降、型式試験に適合した機種からホールに設置されていくという。

 ところで、私は射幸性の高低のみを以って、パチンコ・パチスロを「手軽で身近な大衆娯楽」であるとする行政の姿勢に賛同しかねる。これをよしとした結果、遊技機は時間消費という部分を前面に押し出さざるを得ず、だらだらと長時間遊技する、逆に言えば時間に余裕がなければ遊べない機種ばかりが目立つようになった。これでは大衆娯楽の要素の1つ『手軽』とはほど遠い。この点は改善されつつあると聞くが、“大衆娯楽”と呼ばれるゆえんは射幸性だけでは語れない。業界としても今後、パチンコ・パチスロという遊びが「大衆娯楽」たる要素をより明確にし、その存在意義を多方面からアピールしていく必要がある。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。

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