KDDI(au)は23日、第5世代(5G)移動通信システムの商用サービスを26日から始めると発表した。ソフトバンクやNTTドコモもすでに3月下旬からの開始を発表しており、大手通信3社のサービスが出そろった。臨場感のある高精細な動画視聴などが可能な5Gサービスが月内に日本でも始まる。
KDDIの料金プランは、データ通信容量が無制限の「データMAX 5G」で月額8650円(税別)とし、既存の第4世代(4G)のプランよりも1000円高い。ただ、5Gプラン加入から25カ月間は月額1000円を割り引くキャンペーンも合わせて実施する。家族割引など複数の割引を活用すれば3460円から利用可能といい、23日会見した高橋誠社長は「4G並みの料金水準で(5Gを)お楽しみいただきたい」とアピールした。
通信エリア拡大が鍵
5Gのサービスを使うには、5G対応のスマートフォンが必要で、対応端末はソニー製など7機種を用意。今夏までに順次発売する。5Gが使えるエリアは当初15都道府県の一部地域となるが、順次拡大していく方針で、基地局は2021年3月末まで1万局、22年3月末までに2万局超と増やしていく。
ドコモは25日から、ソフトバンクも27日からサービスを開始すると発表しており、大手3社はいずれも3月下旬からサービスを始める。だが、各社ともサービスエリアが当初は極めて限定的で、多くの人が性能を実感するには時間がかかりそうだ。
5Gは利用する電波が遠くまで飛びにくく、通信網に使う基地局の数をいかに迅速に各地で増やし、通信エリアを広げるかが課題となる。実際、KDDIのスタート時のサービスエリアは主要交通施設や娯楽施設の周辺などに限られる。サービスエリアがスポット的なのはドコモやソフトバンクも同様で、昨年4月に商用サービスが始まった米国でも「エリアが狭い」との声が噴出する。
背景には5Gの技術的な課題がある。4G電波の飛ぶ距離は基地局から半径数キロメートルだが、5Gは数百メートルと短い。全国にサービスを行き渡らせるにはきめ細かな基地局展開が必要で、いかに早く広げるかが各社の競争力を大きく左右する。
このため、政府による基地局投資への減税や予算措置などを生かし、各社とも前倒しで基地局整備を進める方針だ。ドコモは当初計画を2年前倒しし、21年度末に2万局に拡大する計画を打ち出した。総務省が4G電波を今夏にも5Gに転用可能にする方針を踏まえ、ソフトバンクは既存基地局の置き換えを進め、同年末までに人口カバー率9割を達成する目標を掲げる。
設備の相互利用も
エリア展開で競う一方で、KDDIとソフトバンクは昨年7月に鉄塔など周辺設備の相互利用で合意した。5G基地局を細かく整備するには膨大なコストや時間がかかるため、従来の自前主義から脱却し、負担を抑えつつ迅速に整備を進めることも必要だ。ドコモも設備共用を「前向きに考えていきたい」(吉沢和弘社長)としている。
今後の5Gサービスは基地局整備に合わせ、段階を踏んで進化しそうだ。各社の計画を踏まえると、通信エリアが一定程度の広がりをみせるのは21~22年頃。さらに利用者が低遅延や多数同時接続など5Gのフル機能を実感できるようになるには基地局の高度化が不可欠だ。この段階に進むのは最速で22年以降とみられているが、KDDIの高橋氏は「21年度後半からやる」と早期実現に意欲を示した。(万福博之、蕎麦谷里志)
携帯電話大手の主な5G向けプラン
≪基本料金≫
・NTTドコモ 7650円の専用プラン。4Gプランより500円高
・KDDI(au) 8650円の専用プラン。4Gより1000円高
・ソフトバンク 従来プラン(7480円)に1000円上乗せ
≪割引後の最安値≫
・NTTドコモ 4480円
・KDDI(au) 3460円 ※25カ月間の5Gスタートキャンペーン(1000円引き)含む
・ソフトバンク 3480円 ※2年間の5G無料キャンペーン(1000円引き)含む
≪通信データ容量≫
・NTTドコモ 100ギガバイト。キャンペーンで無制限。テザリングは無料
・KDDI(au) 無制限。テザリングは無料だが、30ギガバイトまで
・ソフトバンク 50ギガバイト。一部の動画SNSは無制限。テザリングは月500円
※価格は税別。テザリングはスマホを使って他の機器をインターネットに接続する機能