中小企業へのエール

「囚人のジレンマ」 断ち切りたい利己主義

 京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一

 「囚人のジレンマ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。なかなか説明するとなると難しいのだが、「お互いに協力した方が一番良い結果となることは分かっていても、不信感や、出し抜く気持ちなどから自分の利益だけを追求してしまい、お互いの協調、最善の結果を実現できない葛藤」。こう説明すると難しいゲーム理論がより身近なものとなる。例えば、今回の新型コロナウイルスのデマから始まったトイレットペーパーなど日用品の買い占め騒動もその一つである

 ビジネスの世界においてもいつも感じるのではないか。

 近隣スーパーと激しい値下げ競争をしている中での戦略。あるいは環境問題。最近話題になっている、プラスチックのごみ問題もその一つだ。「プラスチックは安くて便利。自分一人が使う量は少ないから、使い続けていても大丈夫だ」と考える。しかし、皆がそれを続けてしまうと地球環境は崩壊する。

 もっと身近な例では、家族の風呂場掃除の分担。「1日くらい自分がサボっても分からないだろう」と続けていると、まじめにしている人の負担が大きくなる。やがて家族全員が掃除をしなくなり、最後には誰も入れないような風呂場になってしまう。

 今、私たちが生きるこの世の中は、日々激動している。情報は過大なくらいあり、迷うことばかりだ。そんな時代の中で、「正直者がバカを見ないような社会やルールにしよう」と、いくら口では言っていても、それに反した例を何度も見せつけられてしまうと、やがて相手や周りを信用できなくなり、「自分だけが良ければいい」と目先の利益への誘惑から、他者を裏切る選択をする。

 現在の日本のみならず、世界で倫理観の欠如、コミュニティーの崩壊、経済のブロック化、戦争の脅威などを生み出している原因ではないかと考える。

 では、そうならないようにするにはどうしたいいのか。「相手を信用した方がうまくいく」という事例を多く集めることだ。そして、その事例を何度も繰り返し、皆で共有し、蓄積すると次第にお互いが得をすることがわかってくる。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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