フジテレビ商品研究所 これは優れモノ

鹿島 「A4CSEL」

 □鹿島 建機の自動化システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」

 ■現場を工場化 熟練技能者の作業を再現

 政府の働き方改革の後押しもあって、仕事の生産性を上げながら、充実した生活を送るための取り組みが企業に広がっている。今回の「これは優れモノ」は、建設現場の生産性を高める世界初の取り組みについて取材した。

 「小人数で生産量を上げるという二律背反を解消することがミッションです」と話すのは鹿島で機械部自動化施工推進室長を務める三浦悟さん(63)。

 都市環境工学の博士号も持つ三浦さんは、同社技術研究所で現場計測や施工機械制御の技術開発に携わってきた。1991年に43人の死者・行方不明者を出した雲仙普賢岳の噴火災害後の復興工事で、遠隔操縦式の重機による無人化施工システムを導入・検証したエキスパートだ。

 ◆作業員不足と高齢化

 一つ一つ規模や形が違うものを野外で作る建設業はこれまで“人”に頼らざるを得ない労働集約型産業と考えられていた。また、元請けのゼネコンと協力会社の重層構造の中で業務ごとに請け負う体制のため、統一的な生産システムが築きにくい。「ベテランの現場監督が作業状況を見ながら作業員の差配を行うことで工程と品質を確保しているのが現状」(三浦さん)。待ったなしの少子高齢化は、建設業界に急激な作業員不足と熟練技能者の高齢化をもたらしている。

 建設就業者は97年の685万人をピークに2019年には504万人と大幅に減少した。同社ではこうした生産システムの課題と人手不足の問題を想定して、小人数でも生産量を下げない工事の自動化の研究開発を進めてきた。製造業では、工場にロボットを設置し、一定の動作環境で作業をさせることで生産性を上げられる。しかし、建設施工では刻々変化する作業環境に対応するため、自動化は無理だといわれていた。

 三浦さんによると、盛った土を平らにする作業でも、土の特性や量によって建設機械の運転方法を変えないといけない。「熟練技能者は、土砂を見ただけで、どのように機械を操作すればよいのかを感覚で認識し、作業しています」と話す。

 これは、運転技術の巧拙で現場の生産性が左右されることを意味し、個々人の経験則や感覚に委ねる作業形態を変えない限り、工場のような均質な品質、高い生産性は望めなかった。そこで、作業方法や手順を標準化し「現場の工場化」を目指して開発したのが、機械の自動化による建設生産システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」だ。

 ◆月面基地建設に応用も

 ブルドーザーやローラ、ダンプトラックなどの重機には自動化のためのGPS(衛星利用測位システム)やジャイロ、各種センサーおよび制御PCを装備させてある。各重機のPCには、熟練技能者の運転操作技術がプログラミングされており、タブレット端末などを通じて、一度作業内容を指示すれば、各機械が自律的に熟練者と同じように作業を行うという仕組みだ。数人の指示者がいれば、数十台の重機を同時に稼働させられるので、小人数で生産性を上げることが可能だ。

 「人間による遠隔操作ではなく、機械が自律的かつ連携して作業を行うので、月面基地建設に応用できるかもしれない」と三浦さんは、宇宙が現場になる抱負を語った。

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 ≪interview 担当者に聞く≫

 □鹿島 機械部自動化施工推進室長・三浦悟氏

 ■機械を多数操作 60人必要な作業を12人で

 --遠隔操作とは違う

 「A4CSEL(クワッドアクセル)」は、作業内容を与えると機械が自動で作業するシステムだ。原理的には1人で何台の機械でも同時に連続的に動かせる。多数機械の作業になるほど生産性が向上し、工期が短縮できる。人間が重機を操作する従来の方法では、20台の機械を24時間稼働させるためには3交代制で最低でも60人の技能者が必要になる。 A4CSELでは20台の機械を動かすのに作業指示、施工・安全管理、システム監視などを含めても3~4人で足りる。24時間3交代で人員を配置したとしても、12人で済む計算だ。

 --どんな現場で使われる

 土木工事全般だが、まずはダム工事から運用している。2015年に福岡県の五ケ山ダムで自動のローラとブルドーザーの運用を開始し、18年には同じく福岡県の小石原川ダム工事で自動ダンプトラックを加えた3機種連携の重機土工の自動化を実現した。現在、24年竣工(しゅんこう)予定の秋田県の成瀬ダム工事に23台の自動重機の本格投入を準備している。

 --開発で注力した点は

 自動機械を作ることより、どう動かすかが難しい。単に平坦(へいたん)な道路を走行させるのではなく、現場では状況に応じた巧みで複雑な操作が必要となる。熟練者の運転方法をデータ化し、さまざまな状況でのシミュレーション解析を行ったり、人工知能(AI)手法を導入したり、熟練の技を定量化し自動機械に継承させることを目指している。

 --今後の課題などは

 われわれの取り組みは世界初のものだ。機能・性能を向上させ、作業カテゴリーを広げたい。数十台の自動機械を1日稼働させるには数千の作業データが必要で、短時間で正確なデータを作る技術も磨いていきたい。また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と有人月面拠点建設への技術応用を共同研究している。“現場は宇宙”ということが絵空事ではなくなると確信している。このシステムは、労働集約型の建設業界の仕組みを変えると自負している。

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 ■フジテレビ商品研究所

 「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」内に設けられた研究機関。「生活科学」「美容・健康・料理」「IPM(総合的有害生物管理)」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究している。

 http://www.fcg-r.co.jp/lab/

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