金融

「まじめな経営者が損をする」中小への給付金 緊急経済対策

 政府は7日の緊急事態宣言と併せて、営業自粛で損失を受ける中小零細事業者への給付金や、無利子融資を盛り込んだ緊急経済対策を打ち出した。ただ、自粛に伴う損失を直接補償することには慎重姿勢を崩さない。支援制度の使い勝手には早くも疑問の声が出ており、自粛が長期化すれば規模も十分とはいえない。

 「在宅勤務の持ち帰り需要が増え、売り上げはそこまで落ちていない。給付金は企業向けも個人向けも受給できなさそうだ」

 杉並区内で飲食店を経営する男性(58)はこう漏らす。政府や東京都の要請を受けて早い段階から店内の営業をやめ、持ち帰りのみに切り替えたため、通常営業を続けた飲食店よりも収入減は大きかった。にもかかわらず給付金制度では枠外になり、「まじめな店ほど影響が出る」とやるせない思いを打ち明ける。

 男性のような個人事業主の場合、緊急対策の規定では、100万円の給付金を受けるのに事業収入が前年同月比で半減する必要がある。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「収入が半減すれば債務超過になりかねない。条件は相当厳しい」と指摘する。早々に営業を諦めた店や、客数の落ち込みが激しい都市部の店などは対象になりそうだが、郊外で3密(密閉、密集、密接)を避けつつ営業を続けた店は対象外になるという盲点がある。

 金融機関を通じた無利子融資は直近1カ月の売り上げが5%以上減少すれば対象になるが、申し込みが殺到して手続きに時間がかかっており、必要な時期に運転資金を確保できるか分からないという危うさも伴う。

 一方、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法では、政府の権限は営業自粛の「要請」のみで、強制はできない。このため損失を直接補償する規定もない。政府側には、膨大な財源が必要な直接補償は避けたい思惑もある。

 だが、収入減に直結する営業活動の長期停止は事業者の自助努力だけでは乗り切れない。「政府は要請するだけ。民間に判断と負担を押し付けている」。中小零細事業者からこんな不満も出ている。終息時期が見えないウイルスとの戦いに当面の資金繰り支援だけでは不十分だ。

 1カ月の緊急事態宣言が終わった後も事業者が経営を続けられるよう、政府は損失補償の枠組みを改めて見直すべきだ。(田辺裕晶)

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