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「新幹線通勤」じわり拡大 柔軟な働き方、企業や自治体が後押し

 地方から都心へ新幹線通勤する人が増えている。背景には、企業が柔軟な働き方を促したり、自治体が移住や定住のため通勤支援をPRしたりする動きがある。利用者は通勤時間が延びても、ゆったり座って読書や趣味などに活用できると魅力を感じるようだ。

 月15万円まで補助

 「今の仕事を続けながら、故郷を盛り上げる仕事も始めたい」。ヤフー勤務の角谷真一郎さん(33)が新幹線通勤を始めた理由だ。2017年1月に新潟県湯沢町に転居。平日は東京都内に通い、土日は実家の旅館を手伝いながら地域づくりの活動にも参加している。

 出発は午前6時55分。越後湯沢駅から上越新幹線に約1時間半乗り、午前9時すぎに職場着。座れなかったことはなく、車内ではタブレット端末で読書や英会話に励む。地元を訪れる外国人観光客を見込み「通訳できるようになりたい」。

 定期代は3カ月で43万円超だが、ヤフーが月15万円まで補助する。同社は在宅勤務や働く時間と場所を選べる仕組みを導入しており、この制度も「住む場所の選択肢を増やしたい」との狙いだ。

 「夫婦で山が好き。信州に憧れていた」という公務員の男性(59)は、6年前に長野県佐久市に家を建て、都内への新幹線通勤を始めた。以前は満員電車で約40分立って通勤したが「今は1時間20分座れて、趣味の音楽のことを考えたり、疲れたら寝たりできる」。定期代は職場の補助額を超え、月7万円ほど自腹。早い帰宅を心掛けるようになり「仕事の効率が上がった」と予想外の効果もあった。

 JR東日本によると、新幹線定期券の販売収入は増え続けており、13年度から5年間で18億円増加。16年度税制改正で通勤手当の非課税枠が月15万円に拡大したのが追い風になったとみられる。

 子育て世代を誘致

 企業側も支援する。ヤフーのほか、ソフトバンクは転勤での単身赴任を回避したり、介護が必要な家族と暮らしたりする社員に新幹線通勤代を全額補助。「育児とキャリアの両立や在宅勤務など柔軟な働き方を進める一環」としている。

 自治体の後押しも活発だ。角谷さんが住む湯沢町は、通勤費を月最大5万円、10年まで補助。他にも「人口減少に歯止めをかける」(埼玉県熊谷市)「若者の転出を抑制し、子育て世代の移住や定住を促進する」(栃木県小山市)といった狙いで補助を出している。

 課題は災害だ。交通機関の復旧に時間がかかったり、別の移動手段の確保が難しかったりするため備えは必要。また、自治体の移住担当者からは「高額な補助が出せるのは大企業だけ」「会社に『定期代は自腹』と言われて続けられなくなるケースもある」といった声も漏れた。

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