金融

緊急事態宣言 経済に壊滅的打撃 エコノミスト「地方も疲弊へ」

 緊急事態宣言がもたらす活動自粛に関して、金融市場では「経済損失は計り知れない」(第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト)との懸念が広がる。地方にも打撃が波及する公算が大きい。

 新型コロナウイルスの世界的な流行は2008年のリーマン・ショック当時よりも深刻な不況を招くとの予測が専門家から相次いでいる。仮に長期化すれば、国内の経済損失が数十兆円規模に上るとの試算も出ている。

 熊野氏は「雇用へのマイナスの圧力が強くなる」と日本の労働市場の悪化を警戒する。東京や大阪で消費が減り、商品を大都市圏に出荷してきた地方では「製造業の稼働率も下がるのではないか」と心配している。

 東京都の推計では国内総生産(GDP)の都内分に当たる「都内総生産」は年間100兆円超で、全国の約2割を占める。バークレイズ証券によると、東京で宿泊や外食の産業がほぼ活動停止となり製造業も鈍れば、日本全体の4~6月期の成長率を一段とマイナス方向に押し下げるという。

 大和総研の小林俊介シニアエコノミストは「医療崩壊が起きないことが大事だ」と緊急事態宣言による感染抑止策の重要性を強調する一方で、「経済は壊滅的な打撃を受けるとみられる」と不安視する。地方の景気低迷は免れず、現時点での感染者数の少なさをよりどころに首都圏から地方への企業移転を促すのも簡単ではないと分析した。

 みずほ総合研究所の長谷川克之チーフエコノミストは、緊急事態宣言に関し、心理的な影響力が大きく「主要企業を中心に政府の要請に従って自主的、積極的に対応し、経済活動はかなり抑制される」と見通す。

 同氏は、首都圏との商取引の停滞に加え、旅行者も途絶えて「地方は疲弊を強いられる」と語り、地域経済を支える政策の大規模な実施を政府に呼び掛けている。

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