メーカー

漆器のインテリアに若手が挑む 和歌山・海南のブランド「KISHU+」

 漆器の産地として知られる和歌山県海南市の黒江地区で、若手生産者が新しいもの作りに挑んでいる。昔に比べて漆器の需要が落ちている中で「食器類以外の生活用品で、漆の魅力を表現したい」と模索を続ける。

 黒江地区では、30代の漆芸家らの呼び掛けで、2015年に新ブランド「KISHU+(キシュウプラス)」が生まれた。現在、漆器の製造や販売を手掛ける橋本漆芸、山家漆器店、島安汎工芸製作所、中西工芸の代表らが活動中だ。

 「消費者のライフスタイルが変化する中、同じものを作り続けても仕方ないという危機感が根底にあった」。橋本漆芸の大橋善弘さん(39)は、立ち上げた当時の思いを振り返る。

 KISHU+のメンバーは、それぞれが強みを持つ技術を提供し、これまで漆器として手掛けることのなかった生活用品やインテリアを共同製作する。大橋さんは、漆や金銀の粉で絵模様を描く「蒔絵(まきえ)」の職人。素材を研磨して形を整えることや、漆を均一に塗ることが得意な者もいる。

 3年前に加わった山家漆器店の山家優一さん(32)は、自身が中心に手掛けた漆塗りの照明器具を、フランスの首都パリで18年に開かれたインテリア展示会に出品。高い評価を得た。「黒い漆を使ったことで、器具の材料に使われる金属にはない、独特の重厚感を出すことができた。欧州製品では表現するのが難しい」と胸を張る。

 KISHU+の品々は国内の展示会でも注目され、住宅展示場の運営会社などからの商談が増えているという。メンバーは東京都内のデザイナーと連携したり、木材の他にも使ったことのない素材を取り入れたりしながら、国内外で認知度を高めたい考えだ。

 「従来の漆器製造だけでも、私たちは逃げ切れるのかもしれない。でも、後に続く世代のことを考えると、新しい挑戦が必要」と、先を見据える大橋さん。山家さんは「数十年の後に『漆器ならKISHU+』と言われるようなブランドに育てたい」と語る。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus