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「月給はTシャツ2~3枚分」たった1人で労組結成に立ち上がったヒロイン (2/2ページ)

波溝康三

 「何度も私が交渉し、ようやく労組を認可してくれた行政幹部のモデルとなった人は、映画の中では最後まで悪者のままでしたが、現実には、その後、彼は政府から解雇されました。彼も労働者のことを思い、政府と戦ってくれていたのです」と嘆く。

 また、映画の中で、シムは家族3人で幸せに暮らしているが、「実際には、その後、私は夫と離婚しました。映画で描かれているよりも、私の労組の活動に対し彼は協力的ではなかったんです」と明かした。

 労働問題は世界の課題

 現在のバングラデシュの労働環境はどうなっているのだろうか。

 「私の工場で2013年に労組が結成された話は話題となって社会へ波及し、労働環境は改善されていくのですが、女性労働者の賃金はいぜん安く、まだまだ改善余地が大きいのが現実です」

 なぜ、10代の頃に労働問題に目覚め、たった1人で工場幹部や行政の圧力に屈することなく戦い続けることができたのか。 

 「私は工場の仕事に誇りを持って働いてきました。それなのに解雇されかけた。労働者の権利を守るためには、今、自分が動かなければいけない。後に続く若い人たちの夢や希望まで潰えてしまう。自分1人のための戦いではないと思ったから、苦しくても続けられたのだと思います」

 同作を一緒に作り上げたバングラデシュ生まれの気鋭の女流監督、ルバイヤット・ホセインと、この映画製作を通じて意気投合。今後は、2人で、世界の映画祭を回り、バングラデシュの労働の実態を伝えるとともに、海外の労働問題について勉強し、自国だけでなく世界の労働環境の改善のために提言していきたいという。

波溝康三(なみみぞ・こうぞう) ライター
 大阪府堺市出身。大学卒業後、日本IBMを経て新聞記者に。専門分野は映画、放送、文芸、漫画、アニメなどメディア全般。2018年からフリーランスの記者として複数メディアに記事を寄稿している。

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