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公共事業への中断要請700件 コロナ感染への不安が現場に拡大

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言後、国土交通省発注の公共事業計約700件の中断を受注企業が申し出たことが15日までに分かった。現場での感染に不安が広がっているためで、国交省は企業側と協議して可否を決める。中断に伴う工期変更、追加費用の負担にも応じる方向だ。堤防や道路の災害復旧など緊急性が高い工事は原則続ける。

 宣言後、工事の原則中止を決めたゼネコンもある。中断が長引けば、日当制で働く作業員の生活や、道路の通行規制が続くといった暮らしへの影響も想定される。

 10日時点で中断や工期変更の申し出があったのは工事が100件、測量や設計などの業務が600件。工事は全件数の2%、業務は15%だが、宣言対象7都府県に限ると工事の中断要請は8%、業務は33%に上る。

 国交省は2月、中断の相談に応じる方針を表明したが、3月25日時点では工事、業務とも申し出は全体の1%未満だった。インフラ整備が滞ると社会的な影響が大きく、新型コロナに関する政府の対処方針は「公共工事は最低限、継続を要請」と明記。企業側にも、工事が遅れると将来の受注機会を逃しかねないとの判断があった。

 しかし、国内の感染拡大につれ、中断申し出が増加。地下やトンネル、庁舎などの建築現場は「密閉」「密集」「密接」につながりやすく、工場内で橋などの部材を造る場合も多い。赤羽一嘉国交相は14日の記者会見で「公共工事の現場は3つの密が生じやすい場面もある」と指摘した。

 国交省は重機のリース代など中断で生じる費用は負担し、工期変更も認める方向だが、企業側からは「再開に備えて作業員を確保しておく費用も必要。国がどこまでカバーしてくれるか疑問」との声も出ている。

【用語解説】公共事業

 国や自治体、高速道路会社などが発注する土木・建築事業。道路や堤防の建設・補修のほか、学校、公民館など公共施設の整備といった「工事」、主に前段階に行う設計や測量、地質調査などの「業務」に分かれる。国土交通省が2018年度に発注した工事は全国で約1万3000件だった。国の20年度当初予算に計上された公共事業関係費は6兆8571億円。発注方式は価格が最も安い業者と契約する一般競争入札、価格以外の技術力も考慮して決める総合評価などがある。

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