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廉価版iPhoneにコロナの影 スマホ需要減、安定調達にも不安

 米アップルが発表したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)SE」は5万円を割り込む価格水準で、消費者へのインパクトが大きい。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出規制などが世界のスマホ需要を冷え込ませている他、生産遅れなどによるSEの安定調達への不安も拭えない。日本で5割弱のシェアを誇るアイフォーン廉価版といえども、当面の販売は低調にならざるを得ない見通しだ。

 「割引後に3万円以下で最新アイフォーンが買えるなら通常だと売れないはずがない」。関係者は携帯電話大手各社の購入補助策の適用後に手頃な価格となるSEへの期待を口にする。

 国内では昨年10月に携帯電話の販売ルールが変わって値引きが制限され、スマホが売れなくなった。このため、各社とも5万円以下の中価格帯の端末を充実し巻き返しに動いていた。

 国内で一強状態のアイフォーンだが、10万円以上の高価格帯の端末が中心だっただけに、廉価版への期待値は高い。携帯大手は今後数年で第3世代(3G)移動通信システムのサービスを終えるのに先立ち、従来型携帯電話(ガラケー)からスマホに乗り換える人の争奪戦が起こっており「そうしたニーズにもマッチする」(KDDI)。

 だが、実際はコロナ禍によって「スモールスタートとならざるを得ない」(関係者)との見方は強い。

 携帯大手3社のSEの販売は27日からと足並みをそろえてアップルの発売日から数日間遅らせた。「発売後初の週末に店舗に人が押し寄せるのを抑制」(ソフトバンク)し、新型コロナのクラスター(感染者集団)発生を防ぐ狙いだ。営業時間を短縮している販売店では既存顧客のサポート業務に終始せざるを得ず、積極的な営業はしにくい。

 米調査会社のストラテジー・アナリティクスによると、2月の世界のスマホ出荷は前年同月比38%減と、各地で広がる外出規制が市場に大打撃を与えている。

 アップルは中国での生産遅れなどで1~3月期の売上高が目標未達になると発表した。SEの安定調達にも懸念が残りそうだ。

(万福博之、高木克聡)

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