デジタル経営革命新時代

社会課題解決 若い世代の参画を

 衆議院議員・鈴木隼人氏×STANDARD代表取締役・安田光希氏

 人口減少、超高齢化、格差拡大、果てにはコロナウイルスまで…。日本はこれまでになく数々の課題に直面している。われわれはこの難局をどう乗り切るべきか。STANDARD代表取締役の安田光希氏が「日本再生に向けた三本の矢」を提言する衆議院議員の鈴木隼人氏に産業政策について考えを聞いた。

 デジタル技術と結びつける

 鈴木「私は『日本再生に向けた三本の矢』という政策を掲げています。第一の矢は『個の育成・強化型』社会保障への転換。第二の矢は『課題突破型』産業政策への転換。第三の矢は『持続可能型』社会の構築です。特に第二の矢について言えば、現状の産業政策は、薄く広くの『全方位型』産業政策だと言うことができます。これに対して『課題突破型産業』を重点的に育成していくべきだというのが私の考えです。『課題突破型産業」とは、貧困問題や環境問題をはじめ様々な社会課題を解決する力を持つ産業を指します。現在、新自由主義とグローバリゼーションの進行に伴う副作用や過渡期の混乱が看過できないレベルに達しつつあります。こうした構造的な課題に対しては官民挙げて解決していく必要があると考えています」

 安田「鈴木先生と同様に、私も日頃から既存の政策に違和感を持っていました。特に、日本の高等教育においてデジタル技術の活用が前提とされていない点については強くそう感じます。海外と比較すると、日本の大学は各学部で扱う社会課題を旧来のアナログなアプローチで解決しようとすることが多いのではないでしょうか。つまりは、社会課題の解決とデジタル技術が切り離されて議論されているということです。本来なら、もはや課題解決の土台となっているデジタル技術は、あらゆる学部や学科で必須科目として習得されるべきです。先端のデジタル技術を活用することは前提として、それを学部や学科で扱う専門領域とどのように組み合わせて社会課題を解決するのかを考えるという教育のあり方が必要だと思います。実際に、私たちはそれを実現するために『東大HAIT Lab』というコミュニティーを立ち上げ、学生に対して基礎的なデジタル技術を学ぶ機会を無償で与えています。若くて柔軟な考え方をする彼らは、教科書で学んだデジタル技術と現実の課題解決を結びつけることが本当に上手です。また、付加価値に焦点を当てて発想させるように促すことで、自然と様々な社会課題を深く知ろうとするようになっていきます」

 鈴木「そうですね。現代の社会課題との戦において、テクノロジーの活用を前提とした発想は不可欠です。今、ごく一部の教育現場では実践教育みたいなものが始められています。例えば、東京都では広尾学園の取り組みが有名です。こうした先進的な取り組みを応援していきたいと思いますし、経済産業省なども頑張っています。実際、教育現場でこれを妨げる制度的な壁はありません。校長や教育委員会が決めれば進む話です。ぜひ、そのためのムードづくりを一緒にやっていけたらと思います」

 安田「ぜひやりたいです。若い世代を呼び込むことには大きな意義がありますから。たとえば、私は政府が注力しているスーパーシティ構想の議論にも彼らを参画させるべきだと思っています。この構想は将来の数十年にわたる街のあり方を考えるものですが、その時代に主役となっているのは、いまの10代や20代の若者です。彼らはその街での快適な暮らしをつくっていく立場でもありますし、貧困や環境といった社会課題に長く影響を受ける立場でもあります。スーパーシティ構想に限らず、私たちの世代は様々な社会課題に強い当事者意識を持ち、提言や実証実験をしていくべきです。いまは若い世代が先んじでデジタル技術を学んでいますから、そこに追いつくように、制度を動かしたり意思決定をしたりする立場の方々にもリテラシーを身に着けていただき、協働をスタートさせたいです」

 鈴木「若者との協働で言えば、私は『若者政策推進議員連盟』の運営をやっています。その議連で現在、若者の政治参加に関する基本法を策定し、今国会に提出しようとしています。この議連には高校生や大学生にも参加してもらい、政策立案プロセスにおいて意見を出してもらっています。このような取組みを通して、若者の声も踏まえた政策を世に送り出していくことが出来ると考えています」

 中小、対応次第で勝機も

 鈴木「また、デジタル対応に関して言えば、産業界においても、大企業のみならず中小企業が最先端のデジタル対応を進めて行くことは大変重要な課題です。税や助成金なども活用しながら、企業のデジタル対応を政策的に誘導していくことも考えられます」

 安田「現在は、安価に導入できるSaaS(Software as a Service)型のツールが充実していますから、それが役立つでしょう。これを上手く活用できれば、初期投資はぐっと抑えられ、中小企業でも十分に勝機が見えてきます。私たちも、まさにこの方法によって事業をDXさせた会社の一つです。私たちが運営する事業の一つに人材育成事業があります。研修をメーンにする人材育成事業は、通常であれば、講師を採用し、受講者を収容する教室を押さえなければなりません。そうすると、人件費や採用費、家賃や敷金礼金など多額の費用がかかります。しかし、私たちは多数のSaaS型のツールを組み合わせたオンラインの研修サービスを構築することで、これを回避できました。テキストをWeb上に掲載し、講師は副業で採用した方にリモートワークで対応してもらい、教室も不要となり、システム開発も安価でスムーズに行えました。それこそ、学生がアルバイトなどで貯めた資本金でまかなえるくらいに。しかも、従来よりも定量的なデータが集めやすくなったため、結果的に顧客満足度も向上しました。このような実体験があるからこそ、資金的なハードルは乗り越えられると胸を張って言えます。

 鈴木「大きな可能性を感じますね。『日本再生に向けた三本の矢』の中で私は『個の育成・強化型』社会保障への転換を掲げていますが、そのキーコンセプトはリテラシーの向上です。社会を生き抜く上で、また、より良く生きる上で、リテラシーを高めていくことは不可欠です。健康に関する知識や生き抜く上での知恵など、日々の生活に関連したリテラシーの習得は極めて重要です。そしてテクノロジーの力を活用して、こういうことが可能になる社会です。社会は本当に大きく変わる余地がある。若い皆さんと共に社会変革を進めて行きたいと思います」

【プロフィル】鈴木隼人

 すずき・はやと 衆議員議員。元金融大臣補佐官、元行政改革大臣補佐官。東大大学院修了。2002年、経済産業省入省。14年から現職。全国認知症予防ネットワーク代表、認知症予防の会代表、育menサミット代表。42歳、東京都出身。

【プロフィル】安田光希

 やすだ・こうき STANDARD代表取締役。灘中時代に株式投資に興味を持ち、世界的なヘッジファンドの創業者、レイ・ダリオ氏の影響で機械学習の世界へ。メガベンチャーで事業立ち上げを経験し2017年8月株式会社STANDARD設立。現在大手企業を中心に350社以上のDX推進・AI活用に関わる。

 ■フジサンケイビジネスアイ「DX SUMMIT2020」今秋開催

 フジサンケイビジネスアイでは、STANDARDによる最先端のDX事例や、国際大手企業のDXへの取り組みを紹介する「DX SUMMIT2020」の開催を今秋に予定しています。このイベントに関する情報、問い合わせはHP(https://standard2017.com/)からお願いします。

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