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#減損損失 企業の資産、コロナで目減り (1/3ページ)

 □財界・商社担当 平尾孝

 3月期決算企業の通期業績発表が今月下旬から本格化する。新型コロナウイルス感染拡大に伴って、業績が当初予想よりも下振れするケースが相次ぐもようだ。その理由のひとつが保有資産の価値が下がった際に損失を計上する「減損損失」だ。すでに丸紅や、JFEホールディングス(HD)が大規模な減損損失を理由に最終赤字に転落する見通しを発表しており、他の企業でも同様の動きが出てきそうだ。

 減損損失は、企業が保有する株式や工場、さまざまな事業といった保有資産の価値が目減りした際に、会計ルールに従って決算に反映させる損失だ。資産の評価額を減少させることを指す全般的な表現である評価損の一種で、帳簿上に示された資産の価値(簿価)を基準にして、株価下落や収益性の低下などで生じた価値の目減り分を損失として計上する。

 代表的な事例が長期保有株式の減損損失だ。ある企業が上場企業の株式を100億円で購入した場合、財務状況を示す貸借対照表(BS)に簿価100億円の資産が計上される。しかしその後の株価急落で、保有株式の価値が30億円に下がった場合、この企業の財務状況は悪化してしまう。

 この際、BSに計上されていた株式の価値が100億円から30億円に書き換えられ、同時に毎年の収益状況を示す損益計算書(PL)には目減り分の70億円が損失として計上される。この70億円が減損損失だ。実際に現金が社外に出ていくわけではないが、企業の業績を押し下げる。

 株価なら50%下落

 減損処理の対象は株式だけでなく、保有している工場といった生産拠点の価値なども含まれる。工場が稼働率の低下や閉鎖などで売上高や利益を生まなくなった場合は、その生産拠点の価値が下がったとみなされ、その分を減損損失として計上する。

 減損処理するかどうかのルールは資産や企業によって異なる。ただ、決算期末の保有株式の価値の下落率が50%以上になった場合は減損処理が必要で、企業によっては30%以上の下落率で減損処理することを定めているケースもある。

 株式以外の資産では帳簿上の価値と現在の価値を比べて著しく減少している場合に減損処理するというケースが一般的だ。減少幅の基準は会社が独自に決めたり、監査法人の意見が反映されたりする。

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