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“巣ごもり”で食品宅配急増 数量制限など対応に四苦八苦

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請や休業・休校要請で「巣ごもり」消費が広がり、生活協同組合などの食品宅配サービスの注文が急増している。注文が急激に増え、セットセンターに商品が入り切らず、トラックにも積み込めないため、数量制限に乗り出すなど対応に四苦八苦している。

 「こんなに短期で組合員や注文が急増したのは初めて。うれしい悲鳴だが、安定供給が崩れてしまい、複雑な気持ちだ」

 1都10県で食品宅配サービスを展開するパルシステム生活協同組合連合会の渉外・広報室の植田真仁担当部長はこう語る。

 「3密」を避けるため、スーパーでの買い物を控え、インターネットで食品や生活必需品を注文し、自宅まで商品を届けてもらう宅配サービスの利用者が急増している。

 パルシステムの2月の利用者数は74万人だったが、5月に81万人となり、3カ月間で7万人増えた。新規組合員に加え、利用再開者や利用頻度を上げている人が増えているという。

 この3カ月間で注文数も3~4割増となり、商品をセットするセンターは約220万点が上限だが、約50万点超過している状況が続く。このため、一部商品を抽選としているほか、食品全般の数量を制限する措置を強いられている。

 人手が足りず、配達時間の遅れも一部で起きている。「数量制限の実施で注文した約8割の商品は配達できる態勢を維持するよう努めている」(同)。新規組合員への配達は加入した2~3週間後から始まるが、特に申請が多い東京は1カ月以上に引き延ばしている状況だ。

 一方、全国に約2200万人の組合員を持つ日本生活協同組合連合会(コープ)の4月の新規加入申請数は前年同月比で3~5倍となった。特に首都圏の新規加入が目立った。4月の注文数(推計値)は同約19%増だった。緊急事態宣言発令後から急激に申請数が伸びたため、欠品が生じ、トラックが足りない状況が発生している。一部のセットセンターでは増員の措置を取った。渉外広報本部の近藤美奈子部長は「新型コロナの収束が見えず、5月になっても問い合わせの数は変わらない」と話す。

 食品宅配サービスを3ブランド展開するオイシックス・ラ・大地も対応に追われる。子育て中や共働き世帯向けのオイシックスは20分で2品を作れる献立キットが臨時休校発表後に殺到し、3月は前月比2~3割増となった。既存会員に配慮し、約1カ月間、おためしセットや定期コースの入会を一時的に休止した。有機野菜などを販売する「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」も冷凍食品や缶詰や乾物の販売が好調だ。

 巣ごもり消費の拡大で、対応に追われている食品宅配サービスだが、なかなかセットセンターの拡張やスタッフの増員などの投資に踏み切れない事情がある。「新型コロナの収束後も新規加入者が継続するかは不透明で、投資には二の足を踏まざるを得ない」(生協関係者)との本音も。需要増が一時的な可能性もあり、各生協は対応に悩まされている。(黄金崎元)

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