高論卓説

短期的にV字回復可能な自動車市場 在庫問題なく需要喚起策が有効 (2/2ページ)

 ただ、重要な違いを3点認識すべきだろう。リーマン・ショックは起点が金融システム危機であり、長期にわたって需要後退→生産調整→業績悪化の負の連鎖に見舞われた。新型コロナは、経済活動が停止され瞬間的に最悪ボトムに達するが、経済活動の回復とともに業績もV字回復が可能だ。

 リーマン・ショックは需要後退から生産調整へ数カ月もの長いリードタイムが存在し、在庫圧縮が生産混乱を長期化させた。今回は需要消滅と生産調整が同時に進んでおり、在庫問題が生じない。需要喚起政策が発動できれば、生産活動も同期して急回復が可能である。

 新興国シフトや固定費30%削減など、リーマン・ショックは自動車産業に多大な構造変化をもたらした。新型コロナがいかなる構造変化を引き起こすのか、いまだ先行きは不透明。アフター・コロナ時代の構造変化の論議が今後の重要な論点である。

【プロフィル】中西孝樹

 なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に「CASE革命」など。

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