ワークスタイル最前線

「明確な方針を」当事者訴え

 ハラスメント規制強化 フリーやLGBT

 6月からハラスメントの規制が強化される。一歩前進した形だが、国が企業に義務付けるパワハラ対策や対象は限定的。被害を受けてきたLGBTなど性的少数者や、雇用関係がないとして国の防止指針では義務の対象とならなかったフリーランスの関係者は、さらなる対策と、一人一人の意識改革を訴える。

 「職場での暴言は日常茶飯事。仕方ないと思ってきた」。映像業界でフリーとして20年以上働く男性(43)は打ち明ける。仕事の都度変わる依頼主や現場で指示を仰ぐ相手から言いがかりのように説教されたり、ギャラを踏み倒されそうになったりしたことは数多い。

 芸能や出版分野のフリーを対象とした昨年の調査では「パワハラを受けた経験がある」とした人は6割に上った。男性は「依頼がなくなるかもしれないという恐怖があり、のみ込むしかない」と話し、実態を踏まえた上での対策強化を求める。

 共同通信の主要110社アンケートでは、フリーへのパワハラ防止について「対応予定がない」と答えた企業は48社を占めた。取引実績がないため現状では必要性を感じていない社も一部あった。一方「対応済み」「対応予定」としたのは53社。「雇用形態で区別しない」との回答も多かった。

 フリーランス協会の平田麻莉代表理事は「企業の対策に加え、働く人それぞれがパワハラ防止のルールができたことを認識し、改善のきっかけにしていく必要がある」と話す。

 指針ではLGBTなど性的少数者を念頭に、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や暴露(アウティング)をパワハラの一類型に例示した。加えてプライバシーの保護も求めている。最近では、性の多様性に関して学んだ学生が採用面接時に自らの性について伝えるカミングアウトの例も増えているといい、企業の対応が問われる場面も多くなっている。

 共同通信のアンケートでは、既に啓発に取り組む企業を含め、104社が「研修や啓発を行う」「対応する方向で検討中」とした。

 ただ現状は、指針で定められた義務を額面通りに果たすだけでは不十分だ。「懇親会で上司が『ゲイ』と自分のことを突然暴露し、絶望的になった」「しぐさが女みたいと笑いのネタにされた」などの被害は絶えず起きている。嫌がらせ以前の、理解不足から起こるハラスメントも多い。

 LGBT法連合会の五十嵐ゆり共同代表は「当事者の意見など、適切な情報に触れてほしい。共感や気付きを得れば、対策の推進力になる」と指摘。「経営層の姿勢は重要。知識を深め、明確な方針を発信してほしい」と話している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus