新型コロナウイルスの感染拡大で、スポーツ振興くじ(サッカーくじ)の販売中止が長引き、スポーツ施設の整備や有望な若手の育成に充てる助成金が減少する恐れが出ている。助成金はくじの売り上げを財源とするが、Jリーグは再開のめどが立っておらず、現在の情勢が続けば日本のスポーツ界の地盤沈下につながりかねない。
日本スポーツ振興センター(JSC)によると、サッカーくじは2019年度の売り上げが約938億円で、20年度は166億円超を助成金に充てた。このうち将来性のある若手の育成や発掘に約18億円、地域スポーツ施設の整備に57億円余り、スポーツ団体の活動費には30億円以上を計上し、各地の“草の根”のスポーツ活動を支える役割も担っている。
くじの売り上げは昨年11月末に完成した国立競技場の建設にも使われている。毎年の売り上げの10%分を整備費の返済に充てる計画で、整備費1569億円のうち800億円程度をくじの収益から捻出する方針だ。しかし、販売中止が続けば財源不足で返済計画に狂いが生じる可能性もある。
19年度は、最高1等当せん金額を12億円に引き上げた新商品「メガビッグ」を発売し「(20年)2月上旬までは1000億円超の売り上げを見込んでいた」(関係者)。しかし、新型コロナの影響で海外サッカーやJリーグが相次ぎ休止になり、売り上げは激減。くじは3月上旬に成立したのを最後に販売が中断された。
Jリーグは無観客試合の実施も視野に入れ、再開の時期を探っているが、緊急事態宣言の延長で6月中も厳しい情勢だ。くじの対象となるサッカー界は、スポーツ界全体の課題として危機を乗り越えようと呼び掛けているものの、先行きは不透明な現実がある。
くじはコンピューターが無作為に予想した結果を購入する商品「ビッグ」が売り上げの大半を占めている。購入層はサッカーファンに限らず、宝くじのような感覚で習慣的に買っている人も多いという。スポーツ庁関係者は、無観客試合でも売り上げへの影響は少ないとみており「くじの販売機会さえあれば良いのだが」と気をもんでいる。