愛知県西尾市の老舗抹茶メーカー「あいや」が、抹茶の海外輸出を始めて35年以上たち、昨年は初めて全出荷量の半分を輸出が占めるまでになった。国内トップクラスの生産量を誇り、オバマ前米大統領が好んだ抹茶味のアイスクリームでおなじみの「Matcha」表記を海外で定着させたことでも知られる。
社長の杉田武男さん(45)は「塩や砂糖と同じく生活の中心の味になるよう、純粋に良いものを作っていきたい」と話し、海外での販路拡大にも意欲的だ。
同市は、抹茶の原料となるてん茶の全国有数の産地。4月下旬、市内に広がる茶畑は黒いシートで覆われており、風が吹くとシートの切れ目から緑鮮やかな茶葉がのぞいた。西尾茶協同組合によると、茶摘み前の約1カ月間、シートをかぶせてうま味を引き出すという。
あいやは1888年創業。1983年の米国輸出を皮切りに、海外への抹茶輸出をこの20年ほどで2.5倍以上に増やし、昨年は出荷量約1300トンのうち輸出分が約650トンに達した。「Matcha」のスペルももともと、同社が米国で売り込む際に統一したものだ。
海外でも抹茶味のアイスクリームやラテが販売され、親しまれるようになっている。抹茶味のアイスはオバマ氏の好物として来日時に話題に。あいやは、いずれも外資大手のアイスクリームメーカーやコーヒーチェーンに出荷して販路を拡大し、米国のほか、ドイツ、中国、タイなどにも現地法人を設立してきた。
国内でも抹茶味の菓子のバラエティーが増え、通年で売られている。杉田社長は、今後はおいしさに加え、抗酸化作用など、より高い機能性が求められると説明。「中国や韓国も生産しているが、合わせても世界の市場に行き渡る量ではない。独り勝ちを目指すのではなく、みんなで切磋琢磨(せっさたくま)してレベルを押し上げていきたい」と力を込めた。