【ロンドン=板東和正】ドイツ政府は25日、同国航空大手ルフトハンザグループに対し、総額90億ユーロ(約1兆円)の公的支援を実施することで同社と合意したと発表した。ルフトハンザは、新型コロナウイルス感染拡大による運航休止の影響で経営危機に陥り、政府に支援を求めていた。
英メディアによると、支援は、ドイツ政府の企業救済ファンド「経済安定化基金」が活用される。政府側は3億ユーロで同社株式の20%を取得し、57億ユーロを議決権のない形で出資する。政府系金融機関のドイツ復興金融公庫などが30億ユーロを融資する。支援の最終的な決定には、欧州連合(EU)欧州委員会の承認が必要になるという。
また、ドイツ政府はルフトハンザの監査役会に2人を送り、経営にも参画する方針。他社が買収に動いた場合には、政府の出資比率を25%超に引き上げられる条項も加えたが、ショルツ財務相は25日、ルフトハンザの経営が回復した場合は株式を売却する考えを明かした。株式は2023年末までに売却するとみられている。
ルフトハンザは3月、新型コロナの影響を受けて、グループの長距離線の輸送能力を最大90%削減すると発表し、国内線も大幅に減便した。世界の航空需要がコロナ危機前の水準に戻るには数年かかる見通しだ。
ロイター通信によると、ドイツのアルトマイヤー経済相は今回の公的支援により「ルフトハンザの身売りが阻止される」と述べ、数千人の雇用維持につながるとした。