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造船の手持ち工事量「危険水域」 新型コロナ追い打ちで20年ぶり低水準

 戦後長らく世界をリードした日本の造船業が崖っぷちに立たされている。新型コロナウイルスによる景気悪化で受注が低迷し、国内の手持ち工事量は20年ぶりの低水準となる「危険水域」に達した。中国や韓国勢との競争で経営体力を既に消耗しており、業界の危機感はかつてなく高い。

 各社の2020年3月期連結決算は厳しい数字が並んだ。最終損益はジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市)が390億円、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)が862億円、名村造船所は180億円と軒並み赤字を計上。川崎重工業の造船事業も営業損益が6億円の赤字に転落した。

 より深刻なのは先行きだ。船舶建造量で国内首位の今治造船(愛媛県今治市)と2位JMUの資本提携を発表した3月末の共同記者会見。商船で国内シェアのほぼ半分を握る大連合の船出にもかかわらず、語られたのは「欧州では商談すらままならない。新型コロナが収束しても受注が平常に戻るには数カ月のタイムラグがある」(今治造船の檜垣幸人社長)という暗い見通しだった。

 日本船舶輸出組合によると、受注残の目安となる国内メーカーの手持ち工事量は4月末時点で1644万総トン。ここ1年の減少傾向に新型コロナが追い打ちを掛け、昨年4月の2443万総トンから3分の2に縮んだ。

 造船は工期が長く、効率的な生産には年単位の見通しが欠かせない。手持ち工事量は「2年を切ると苦しい」(檜垣社長)とされる。年間1300万総トン程度の国内建造量を基に単純計算した現在の手持ち工事量は1年強にとどまっている。

 半世紀近く世界トップの建造量を誇った日本の造船業は、1990年代後半から韓国、ここ10年は中国にも押され、世界3位が定位置となった。政府の支援を受けて規模拡大を急ぐ中韓勢とは対照的に、日本は乱立する10社ほどが限られた受注を食い合う状態から抜け出せない。

 造船業は瀬戸内や九州に拠点が集まり、部品を含め全国で約13万人が従事する。三井E&Sが千葉工場(千葉県市原市)の造船事業終了に伴い200人の希望退職を募るなど、雇用に手を付ける例も出始めた。造船を大口顧客とする鉄鋼業など裾野は広く、地域経済への打撃は計り知れない。

 生き残りに向け業界関係者が期待するのは、今治造船とJMUを核に提携の輪を広げる「日本連合」の早期実現だ。JMUの親会社IHIの次期社長である井手博最高執行責任者(COO)は「(今治とJMUを)世界と戦うオールジャパンの巨頭としたい」と語る。新型コロナに背中を押され、再編議論がもう一段進む可能性がある。

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