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テークアウト拡大 競争激化 サービス各社、加盟店獲得へ スマホ決済と連携も

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全国での外出自粛に伴い、飲食店のテークアウトをスマートフォンのアプリで手軽に注文できるサービスの利用が急拡大した。緊急事態宣言が解除され、通常の営業が再開した後も、サービス各社は引き続き需要の伸びを見込んでおり、システム導入費用を無料化するなど、加盟店の開拓競争が熱を帯びる。スマホ決済とも連携しやすいサービスで、キャッシュレス決済事業者を巻き込んだ合従連衡にもつながりそうだ。

 無料通信アプリ大手のLINE(ライン)が運営するテークアウトサービス「LINEポケオ」は、4、5月の2カ月間で利用店舗数が1000店舗以上増え、売り上げは2カ月連続で前月比で約1.5倍と急拡大している。LINEの担当者は「テークアウトのメニューはカレーなどの定番だけでなく、手間のかかったものも増え、飲食店の幅が広がっている」と話す。

 初期費用など無料に

 LINEは5月、USEN-NEXTホールディングス(HD)傘下の有線放送大手USENと業務提携し、USENの飲食店向けタブレット端末を利用した決済システムをLINEポケオと連携した。USENのシステムを利用している飲食店は、新たな端末を用意しなくてもLINEポケオを導入できる。LINEは9月末まで初期費用や販売手数料を全て無料にして加盟店獲得へ攻勢をかける。

 顧客のところまで品物を届けるデリバリーサービスにくらべ、実際の店舗まで客が商品を受け取りに来るテークアウトサービスは、飲食店にとってより簡単に導入できる。サービス利用者にとっても、配達料金がかからないことや消費税の軽減税率が適用されることもあり、手軽に店のメニューを家で楽しむことができる。

 飲食店情報サイトの「食べログ」を運営するカカクコムによると、新型コロナの影響などでテークアウトに関する詳細情報を掲載している飲食店数は5月末で約3万店舗と、4月上旬に比べて約5倍に急増した。最近は、スマホアプリ上でテークアウトを条件に店舗を検索した件数が1月末ごろと比較すると約6倍に増えており、消費者の関心の高まりがうかがえる。

 テークアウト需要の拡大を受けて新興企業のサービスも勢いを増している。スマホゲームなどを手掛けるレアゾンHD(東京都新宿区)傘下のメニュー(同)が提供するデリバリー・テークアウト予約アプリ「メニュー」は4月、都内限定だった予約対象をテークアウトのサービスについては全国に広げ、4月だけで約5000店舗の新規申し込みを獲得。加盟店数は今年1月時点の2000店から1万5000店超に拡大した。

 相乗効果狙い協業

 一方、スマホ決済事業者もテークアウト市場の急成長に注目しており、サービス連携の動きが相次いでいる。

 楽天は5月から「楽天リアルタイムテイクアウト」を開始。楽天のキャッシュレス決済を利用できるのが特徴で、サービスの相乗効果を狙う。

 また、NTTドコモの「d払い」やソフトバンク系の「ペイペイ」など、スマホ決済の大手事業者もテークアウトの予約サービスへの対応を始めており、今後、加盟店基盤を急拡大させたテークアウトサービス事業者との協業が加速する可能性もある。(高木克聡)

 スマホアプリを使った主なテークアウトサービス

 (運営会社/サービス名/利用可能店舗)

 メニュー/メニュー/全国1万5000店

 LINE/LINEポケオ/全国約5000店

 楽天/楽天リアルタイムテイクアウト/都内を中心に拡大

 ペイペイ/ペイペイピックアップ/全国2000店超

 NTTドコモ/d払い/牛丼チェーン「吉野家」

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