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お家芸・国内造船が崖っぷち 受注激減、造工会会長「かなり厳しい」

 国内の造船業界が崖っぷちに立たされている。新型コロナウイルスの感染拡大もあり受注が激減。受注残を示す手持ち工事量は20年ぶりの低水準に落ち込んでいる。1950年代から半世紀にわたり世界トップを維持し、電機と並ぶお家芸といわれていた日本の造船業だが、ライバルである中国、韓国との差は開く一方だ。

 環境激変

 「会長になって1年がたったが、取り巻く環境は大きく変わった。わが国の造船業にとってかなり厳しい状況だ」

 17日に行われた日本造船工業会(造工会)の記者会見。斎藤保会長(IHI取締役)は、受注が激減している現状に危機感をあらわにした。

 もともと船舶供給が過剰だった上、新型コロナの感染拡大による移動制限や国際見本市の中止で、「商談数が非常に減少している」(斎藤氏)。環境規制強化に伴い、顧客が「様子見」を続けていることも、発注減少の要因となっている。

 日本船舶輸出組合によると、2019年度の輸出船契約実績(受注量)は前年度比21%減の845万総トンと低迷。5月末の手持ち工事量は、1997年8月末以来の低水準となる、前年同月比約33%減の約1600万総トンにまで落ち込んでいる。受注残が2年分を切ると安定操業が難しくなるが、約1年2カ月分しか残っていないのが現状だ。

 韓国と中国は、日本側がルール違反で「市場をゆがめている」(斎藤氏)と批判する公的支援もあり、さらにリードを広げつつある。韓国は6月に入り、カタールの国営エネルギー会社と2兆円規模に及ぶ液化天然ガス(LNG)運搬船の初期契約に成功。カタールからは中国も3000億円規模のLNG船を受注済みで、日本は建造に高い技術を要する船でも押されている。

 再編加速

 このため、造船を非中核事業とみなし始めた重工メーカー系を中心に再編が加速。三井E&Sホールディングス(旧三井造船)は今年度中に千葉工場(千葉県市原市)の造船事業を終了するほか、12日には艦艇事業を三菱重工業に譲渡する方向で協議入りすると発表した。三菱重工も、商船では香焼(こうやぎ)工場(長崎市)の大島造船所(長崎県西海市)への売却を決めている。

 10月には、国内首位の今治造船(愛媛県今治市)が2位のジャパンマリンユナイテッド(横浜市)に3割を出資し、共同で商船の営業・設計会社を立ち上げる計画だ。

 もっとも、中国では昨年秋に国内首位と2位の統合が実現。韓国も世界最大手の現代重工業が大宇造船海洋の買収手続きを進めており、同型の船を大量受注してコスト圧縮や納期短縮を図る「ロット受注」への対応力が増す見通し。日本が再編で後手に回っている印象は否めない。

 国内では、瀬戸内を中心に部品を含めて約13万人が造船業に従事する。雇用へや地域経済への影響を考えると慎重にならざるを得ないとはいえ、このままでは共倒れになるだけに、さらに踏み込んだ対応が必要だ。(井田通人)

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