地元産のコメで酒造りを-。酒米市場でシェア6割近くを占める有名品種「山田錦」や「五百万石」に取って代わろうと、全国各地の自治体による酒米の品種開発が活発化し、各地で地元に徹した酒造りが盛り上がっている。日本酒の消費が振るわない中、新品種を使った「オール地元」の酒でブランド力を高め、販売増につなげる狙い。海外での日本酒人気に乗り、輸出拡大を目指す動きも強まっている。
農林水産省によると、2019年産の酒米の生産量は約9万7000トン。シェアは兵庫県が開発した山田錦が36%、次いで新潟県の五百万石が20%と2品種で56%を占める。「2強体制」を切り崩そうと福島県は新品種「福乃香」を開発、今年から同品種を使った日本酒の販売が始まった。福島県の酒は全国新酒鑑評会で都道府県別の金賞数が7回連続最多となったが、ほとんどの酒が山田錦を原料とする。県の担当者は「人のふんどしで相撲を取るようなもの。福乃香を使ったオール福島の酒で将来は金賞を取りたい」と期待を込める。
ほかにも近年、宮城「吟のいろは」、栃木「夢ささら」、長野「山恵錦」、石川「百万石乃白」、福井「さかほまれ」など各県で続々と新品種が開発されている。
一方、日本酒の需要は減少の一途をたどっている。人口減や海外酒の流通により、昨年の国内の出荷量は約20年前の6割減の47万キロリットルにとどまった。そこで日本食ブームを追い風に海外市場を開拓して反転攻勢を掛けようとする酒蔵も増えている。財務省の貿易統計によると、19年の日本酒の輸出額は234億円で10年前の3倍となった。
「オール地元」の酒は海外で売り込む際にアピールポイントになり得る。兵庫県は海外市場を念頭に、香りの強さが特徴の新品種「Hyogo Sake 85」を開発した。品種名をローマ字表記としたのは全国初。同県の蔵元が新品種で造った酒は香港に輸出されている。
酒米づくりには農家側にメリットも。「Hyogo」の作付けを支援するJA丹波ひかみの担当者によると、酒米は主食用米と田植えや収穫時期が異なるため作業が集中するのを避けられ、農家の負担軽減や収入増につながるという。
地元の酒蔵に協力したいとの思いから17年に同品種の栽培を始めた、兵庫県丹波市の農家、須原賢三さん(31)は「海外の人に日本酒の良さを知ってもらえる機会となるのはありがたい」と声を弾ませる。開発を手掛けた同県の担当者は「海外市場に手応えを感じている。新品種の知名度を上げて国内での販売にもつなげたい」と話している。