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リハビリ効果で障害者支援に「eスポーツ」活用 専業アスリートも活躍

 障害者の社会参加やリハビリテーションの手段として、コンピューターゲームで腕前を競う「eスポーツ」の活用が広がっている。昨年に開催され始めた障害者大会では早くも専業の「パラアスリート」が活躍。重度障害者の心身の治癒に効果を認める専門家も多い。

 今年5月末、障害者らを対象とした「バリアフリーeスポーツ大会 ePARA」の第2回大会が開催され、36選手がアクションゲームで頂点を争った。優勝したのは、yujikunの選手名で活動する芳野友仁さん(25)。昨年8月、IT企業のBASE(東京都港区)にeスポーツの練習や広報活動が主業務の「アスリート雇用」で採用されたパラeスポーツ界の先駆者だ。

 芳野さんは先天性のプルーンベリー症候群で排尿機能などに障害がある。腹部が異常に膨らむなどした外見にコンプレックスがあり、かつては大会の出場に二の足を踏んでいたが「僕が実績を上げることで(障害者に対する)理解が進み、みんなが活躍できる場をつくりたい」と力を込める。

 ePARAは対戦型ゲームと併せて障害者の就労についてのディスカッションも行い、身体、聴覚、精神障害の選手のほか企業の採用担当者らが参加。障害者が活躍する姿や魅力を企業に知ってもらい、雇用につなげることが大きな目的だ。

 昨年11月に行われた第1回大会をきっかけに4人が就職を果たし、コールセンター業務などに従事する。実行委員会の加藤大貴代表(38)は「eスポーツに必要な作業スキルやコミュニケーション力は企業が事務に求めるものと同じ。障害者に自分らしく働ける機会を提供したい」と話す。

 筋ジストロフィーなどの神経筋疾患の専門医療を手がける国立病院機構八雲病院(北海道八雲町)は、eスポーツをリハビリに取り入れている。重度の障害者でも手先を動かすことができればプレーが可能で、筋肉を動かせない患者のためには視線の動きにより操作可能な機器も開発する。

 2年ほど前に、病院内にeスポーツチームが発足した。作業療法士の田中栄一さん(48)は「身の回りのことができない人が、ゲームの中では自由だったりする。諦めていたことができると感じ、前向きな欲も出てくる」と意義を強調する。

 昭和女子大の丸山信人准教授(人間社会学)は、技術の進歩などで障害者が楽しめる幅が広がり続けるeスポーツの特性に注目する。「社会への接点の創出につながり、身体的、精神的なリハビリにもなる。世界的には健常者の大会で活躍する障害者のプレーヤーも出てきている。今までとは違うハンディの乗り越え方ができる可能性がある」と期待を込めた。

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