新しい生活様式は「パターナリズム」そのものである。メディアも「信じて実行すれば感染しない」とでもいうような報道を繰り返している。だから、多くの国民が自立心を失い無自覚にそれを信じてしまった。新型コロナウイルスによる死亡率が、欧米先進国の100分の1の日本において、人々の行動を過度に抑制し、人と人の対面を避けるよう強いる新しい生活様式が本当に必要なのか。
今後、感染が起こる度に「新しい生活様式に従え」となれば、国民は疑心暗鬼から、さらに人を避け、口をきかなくなる。政府には、いま社会の隅々で起きていることに深く考えを巡らせて、感染症専門家だけではなく幅広い専門家の意見を聴き、新たな提起をするよう求めたい。
【プロフィル】井上洋
いのうえ・ひろし ダイバーシティ研究所参与。明大講師。早大卒。1980年経団連事務局入局。産業政策を専門とし、2003年公表の「奥田ビジョン」の取りまとめを担当。産業第一本部長、社会広報本部長、教育・スポーツ推進本部長などを歴任。17年退職。東京都出身。