中小企業へのエール

新型コロナ収束後の観光業 おもてなしは当面不要で

 今回、世界的規模で突然観光客が蒸発して真冬を迎えた業界はなんといっても観光業である。ホテル、旅館、民泊など経営は、昨年の同期比で9割以上減少した。これは日本だけでなく世界全体の傾向だ。見えない敵、収束が分からない中で、どう乗り越えられるか。全ての経営者が必死である。(京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一)

 新型コロナウイルスの完全収束は、残念ながらワクチンや特効薬の承認などを待たないとならない。すると数年単位をみる必要がある。恐らく新型コロナは、現在のインフルエンザと同様に社会と共存していくであろう。

 そのために、この先の「アフターコロナ」の絵姿を思い浮かべておくことが、同時に必要となる。では、その間の観光業はどうなっているであろうか。

 誰もが自粛生活から解放され、旅行に行きたくてうずうずしているので大きな需要はあるはずだ。しかしその際の観光客は、当面は以前の観光客ではない。飛行機や長距離の公共交通機関を使っての観光客というより、まずは車で行ける範囲の観光が中心になるはずだ。

 これまで、インバウンドなどといって外国からの観光客誘致にいそしんでいたビジネスモデルは、もう少し辛抱しないと役に立たない。いかに地元のニーズを吸い上げられるか、まさしく「原点回帰」である。

 まず、観光客が間違いなく求めるのは、プライバシー性と清潔性であろう。大勢の人が押し寄せる朝晩のビュッフェスタイルでの食事は、この先は受け入れられないであろう。客室は、あえて半分空室にして余裕を持たせる。露天風呂や大浴場も、時間入れ替え制。洗い場、更衣室などに間仕切りを設けるなどの工夫もいるかもしれない。

 温泉地では、各客室のユニットバスに温泉を引き入れ、自室で温泉に入れるような改修も必要であろう。そのため値段は、安値競争をやめて世界標準のしっかりした料金をいただく。

 清潔性については、アルコール消毒などの徹底をどう宿泊客に見える化するかが鍵となるであろう。時間別掃除責任者の掃除内容と担当者を掲示して、客に安心を与える。その際には掃除ロボットの活用も有効である。プライバシー性と清潔性の2点で日本の観光業が何を訴えられるか。

 そして中小・小規模事業者が経営する宿泊施設は、限られたスタッフでどうサービスを提供していくかを改めて考える必要がある。「おもてなし」といった、ぬかずくようなサービスは、当面は必要ない。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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