コロナ禍も一段落し、中小企業の現場も平常モードに戻りつつある。われわれは、この未曽有の体験を「学び」に変え、従前より働きやすい環境へと歩を進めることが肝要だ。(松井一恵)
例えば、「通勤」問題。出社を求めること自体が「ブラック企業」と後ろ指を差されそうな時世の中、テレワークの導入が一気に進められた。ところが、業種的にテレワークになじまない分野がある。医療・介護福祉、宿泊業や飲食業、建設の事業、運輸や郵便の事業、公務など。どうしても出勤が必要なこれらの業種は自粛期間中、休業になったか通常より多忙になったかの両極端に分かれた。
職種についても販売職、サービス職、建設従事者、輸送・保安・清掃従事者、生産工程従事者に関しても生産設備のないところで就業するのは現実的ではない。事務職であっても、在宅での勤務となるとそれ相応の場所と機材が必要となる。今回、テレワークをしてみて、運動不足と家庭用の椅子に長時間座った結果、腰痛を発症したという話を聞く。
そして、情報漏洩(ろうえい)の問題もつきまとう。今のところ日本の「普通の労働者」はテレワークになじまない。そこで、打開策の手がかりをいくつかご紹介したい。
(1)フレックスタイム制。一定の期間(清算期間)とその期間に対する総労働時間を労使の契約で定め、その時間分の仕事をすれば、始業・終業は労働者個人が決めてよい、という働き方。清算期間は通常1カ月だが、2019年4月からは3カ月単位での清算も認められるようになり自由度が増している。労働者個人の事情に合わせて分散通勤、分散在社が可能となる。
(2)近距離通勤手当の設定。社員に会社の近くに引っ越してくる提案も有効と思う。遠方から通勤する社員が会社の近くに引っ越してきた場合、通勤手当の支給が減る。この減った通勤手当を原資として、その一部を社員に手当として還元する。会社側は資金の問題もクリアでき、社員は自己の選択によって手当を受けられ、有事の通勤リスクも低減する。
新型コロナウイルス感染症は確かに災禍ではあるが、それを単なる「災い」にするか、「転じて福となす」かは、われわれの受け止め方次第。これを契機に、より働きやすい職場環境の構築を志向していきたい。
【プロフィル】松井一恵
まつい・かずえ 1968年、大阪府出身。2000年3月、社会保険労務士として独立開業。主に、企業の顧問や労務管理を通じて中小企業に寄り添っている。近著に、「『ブラック企業』とゼッタイ言わせない 松井式超!働き方改革」(KKロングセラーズ)がある。特定社会保険労務士、CFP認定者。