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“静岡産茶”コロナ苦境 新たな茶ビジネス創出急務

 静岡県産茶の生産、販売が苦境に立たされている。高単価で取引される一番茶の今年の取引価格は、新型コロナウイルス感染拡大による需要減少で下落。これから取引が活発化する二番茶の生産、販売にも影響が見込まれる。関係者の中には、厳しい状況だからこそ業界が変わるチャンスとの声もあり、生産者や販売者が動きを見せる。

 県経済農業協同組合連合会(JA静岡経済連)によると、今月初旬の段階で、今年の一番茶の生産量は記録的減産となった前年と比べて15~20%減、金額ベースでも同5~10%減になると見込む。二番茶に関しても、「生産はやや早めだが、一番茶の相場を引きずり、厳しい取引となりそう」(茶業部)という。

 皇室献上茶を川勝平太知事に贈呈するため、19日に県庁を訪れた牧之原市の献上茶指定園主、太田宜孝さんは、「どうなるかわからない状況の中で(皇室に)献上できてよかった」とし、仕上がりに自信をみせたものの、「いつもだったら人を呼んで新茶を(試飲などで)バンバン飲んでもらうのに、それができなかった。苦戦している」と明かした。

 例年高値で取引される高級日本茶の産地、静岡市清水区の両河内地区。二番茶の収穫が進む中、グリーンエイト(静岡市清水区)の北條広樹社長は、「やはり新茶商戦でのコロナの直撃は痛かった」と語る。同社の場合、茶の自社生産に加え、買い取りや店舗運営、直販ルートを持つなど多角経営をしているが、それでも「今期(12月期)の総売り上げで前年同期比25%の減少を見込む」という。

 例年高い評価をほこる同地区だが、最近の需要減にともない、高値が付くミル芽の茶葉の取引価格がそもそも下落傾向にある上に、今年3月末~4月末に厳しい冷え込みや霜被害などに見舞われた。さらに、今年は「東京五輪など大型イベントを見込み、外国人観光客などへのおもてなしニーズとして茶の仕入れが過剰気味だったことも追い打ちをかけている」(北條社長)。

 ミル芽の新茶の取引価格は10年前にキロ当たり5千~6千円程度だったものが「今は半分以下」(北條社長)。そうした厳しい状況だからこそ北條社長は「『静岡茶』というひとくくりではなく、例えば『グリーンエイトのお茶』を指名してもらうというように、茶の製造者らが個々に個性を出しながら収益を安定化させ、向上させる必要があるのでは」と指摘。「業界全体が変われる大きなチャンス。逆に言うと、ここで変われないと本当に先がない」と言い切る。

 生産者の高齢化や後継者不足などの課題解決とともに、アフターコロナを視野に入れた新たな茶文化、ビジネスの創出が急がれる。茶の一大産地、静岡での模索が続く。(那須慎一)

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