新型コロナウイルス感染症が収束しない中での異例ずくめの株主総会がピークを迎えた。開催時間と出席株主数を抑制しつつ、総会の形骸化を防ぐため企業は腐心。だが活発な議論ができた企業は少なく、インターネットによるオンライン化や開催時期の分散といった課題を今後に残した。
26日のソニーの株主総会は入場口での検温に消毒、マスク配布と物々しい雰囲気が漂った。東京都内の男性(79)は「いつもなら会場に入るのに列ができるけど、今年はやっぱり少ない」とつぶやいた。
感染防止は今年の総会の「最優先事項」(金融機関関係者)で、企業は厳戒態勢を敷いた。26日のスズキの総会に参加した名古屋市の男性会社員(56)は「対策がしっかりされていたので不安はなかった」と話した。
一方、感染防止策が議論の支障となった側面も。「なぜ1問しか質問できないのか」。24日の神戸製鋼所の総会では、女性の株主が質問回数の制限の撤回を求めた。都合の悪い説明を避けるためではと訴えたが、山口貢社長は長時間化を避けるためだと理解を求めた。
1時間35分の時間をかけ、昨年の13問より多い18問の質問を受け付けたのが25日のソフトバンクグループ(SBG)。孫正義会長兼社長ら会社側出席者はオンラインで参加し、質問は事前に募った。孫氏は「インターネット配信は多くの方が同時に視聴できる」と利点を強調。今後も株主との対話を重視する姿勢を示し「オンライン総会をさらに進化させていきたい」と述べた。
完全にオンラインで行う総会は日本では禁止されているが、米国では普及が進んでいる。大和総研の鈴木裕主任研究員は「オンラインのみでの総会を認めるため、法改正を含めた検討が必要ではないか」と語る。
国内では総会は決算期末から3カ月以内に行うのが一般的で、3月期企業が7月以降に延ばすためには基準日変更などの複雑な手続きが必要になる。新型コロナの影響で決算の取りまとめには時間がかかったが、総会の期日延長にはハードルが高く、多くの企業が6月中の開催にこだわった。
経済産業省の報告書では、米国や英国、ドイツなどの総会開催は決算期末から4~5カ月先が多いという。日本公認会計士協会の手塚正彦会長は「総会のスケジュールが今のままでいいのか、集中緩和について議論する価値がある」と指摘する。