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ショー減らし過剰生産脱却 コロナ機にファッション界改革

 新作の発表回数を減らし、過剰生産から適正供給へ-。欧州の著名ファッションデザイナーらが、新型コロナウイルスで服の生産や販売に大きな影響が出たのを機に、業界変革を訴え始めた。現状では創造性も失われ、業界全体が衰退するとの危機感が根底にある。

 「私の表現の求めに合った歩調を取り戻す」。イタリアの高級ブランド「グッチ」のクリエーティブディレクター、アレッサンドロ・ミケーレさんは5月、例年9月下旬に開催する翌年春夏向けのショー延期を表明。1年に何度も開いていたショーを2回だけにすると明言した。

 同様にショーの回数を減らすと表明するブランドは相次ぐ。フランス紙フィガロのファッション担当エミリ・フォール記者は「数年前から業界は生産の過剰さを強く感じていたが、やめるきっかけにコロナ危機が必要だった」と指摘する。

 「パリコレ」と呼ばれるパリのファッションウイークは、男女の春夏物と秋冬物に加え、オートクチュール(高級注文服)と、1年に計6回もの新作発表の機会を設定。高級ブランドの多くが、ファッションウイーク以外でも世界各地でショーを開いている。

 速いサイクルの結果、春夏の服が真冬の1月に店頭に並ぶなど「着る季節とかけ離れた時期に売られ、次の新作に押し出されるように店頭から消え、売れ残る」(業界関係者)事態に。セール品となったり大量廃棄されたりする悪循環が、過密な日程で創作を強いられるデザイナーの精神的・肉体的な負担と共に問題視されてきた。

 そんな中、コロナ禍がファッション業界を覆った。グッチの今年1~3月の売り上げは前年同期比22%減で、世界最大の高級ブランドグループ「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」(LVMH)ファッション部門の売り上げも同9%減に。問題が数字となって表れた。

 イタリア・ミラノを拠点にするジョルジオ・アルマーニさんはコロナ禍を「現状をリセットするための貴重な機会」と捉え「ラグジュアリーとは、速いペースではなく手間と時間をかけて作り、大切に長く愛されるもの」として、今年の春夏向けの商品を9月上旬(日本では8月末)まで店頭に並べる方針。

 パリコレで発表するドリス・バン・ノッテンさんらも業界への公開書簡をウェブで発表。季節のずれを直し「不要な商品と生地や在庫の廃棄を減らす」などを提案した。

 日本のブランドの中には、映像を駆使して新作やデザイナーの思いをデジタル配信するなど、ショーの開催自体を見直す動きも。日本の服飾小売業「ユナイテッドアローズ」の栗野宏文上級顧問は「コロナ禍で人々は本当に必要な、価値ある物だけを選ぶようになった。ファッションは存在価値そのものが問われ始めた」と話している。

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