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日本のプロスポーツ 赤字補填でチーム経営は拡大できるのか

 新型コロナウイルスの感染者が再び拡大しそうな様相だ。このまま新型コロナとの長い戦いを見据えなければならないのか。これからもマスクを着用しなければ外出することができないのだろうか。早く元の社会に戻ることを願ってやまない。(帝京大学教授・川上祐司)

 小職は3月、MLB(大リーグ機構)スプリングトレーニングキャンプ中に米国の国家非常事態宣言を経験したが、改めて米国のプロスポーツリーグおよびチームの影響力と行政の強制力を肌で感じた。しかし、残念ながらその後の感染者数は拡大の一途をたどり、その影響は多くのプロスポーツリーグに及んでいる。

 米経済損失3.6兆円

 春に開幕を予定していたアメリカンフットボールの新リーグXFLも早々に運営を中止し破産申請に追い込まれた。また、マイナーリーグも今シーズンの中止を決めた。スポーツビジネスジャーナルによると5230のイベントが中止となり、その経済損失は約340億ドル(約3兆6500億円)という。一方、MLBは選手会側との交渉が難航したものの、23日または24日にレギュラーシーズンが開幕することが決定した。選手会側は「日割り100%の年俸で70試合制」を主張したが、最終的に「60試合制」を提示するリーグ側が強行開催する。両者の論点は、シーズン縮小に伴う年俸削減幅である。これから約3週間のホームスタジアムでのキャンプを経て約4カ月遅れの開幕試合を無観客で迎えることになる。

 既にその先陣を切って開幕したのが日本のプロ野球である。春先のオープン戦より行われていた無観客試合に、MLBチームや行政のスポーツ関係者は冷ややかな目を向けていたが、今やスポーツシーンのトレンドとなりつつある。無観客試合を全く違和感なくテレビ放映するプロ野球は、親会社の恩恵ともいうべき日本のスポーツビジネスの特徴でもある。

 それは1954年に国税庁から出された「職業野球団に対して支出した広告宣伝費などの取り扱い」と称する通達にある。これにより親会社が球団へ支出した広告宣伝費や球団が出した赤字を補填(ほてん)しても親会社の経費にできるのである。このプロ野球のビジネスシステムがこれまで親会社の経営と子会社であるチームの存続を支えてきたが、ついにJリーグの親会社にも適用されることになる。

 本質的発展を阻害

 親会社から多額の支援を受けるJリーグチームは存在するが、リーグ存続のためのチェアマンのリーダーシップに敬意を表する。当然ながら他のスポーツリーグもその恩恵をあやかりたいだろう。Bリーグチームに至っては約50%がスポンサー収入であり、東京都内を拠点とする2チームはともに60%を超える。また、プロゴルフトーナメントの多くは企業が主催する。既に多くのツアートーナメントが中止になるも、週末の番組では「ツアー特別編」が放送されている。もちろん主催社からの多額な広告費で賄われていることは言うまでもない。

 親会社とメディアの恩恵によって発展を遂げた日本のプロスポーツ。同時に親会社の経営と子会社のスポーツチームの運営を支える画期的なビジネスモデルであることは間違いない。このコロナ禍でも十分に機能している。しかしそれはあくまでも親会社のスポーツマーケティングであって本質的なプロスポーツビジネスとしての発展を阻害してきたのではないか。果たして今回の「限定解除」が今後の拡大につながるのだろうか。プロスポーツリーグ、チームのマネジメントが今まさに問われている。

【プロフィル】川上祐司

 かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭を執っている。著書に『アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略-ファン・チーム・行政が生み出すスポーツ文化とビジネス』(晃洋書房)など。55歳。大阪府出身。

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