中小企業へのエール

政府の補助金と会計制度 公的資金は別処理で使途明朗に

 今回の新型コロナウイルスの関係で世界的にもそして日本でも、政府が直接企業に休業補償や所得補償をすることが一般的となった。または、特に倒産しては困る重要な企業に対しては、直接政府出資という形での出資も、現在大企業のみならず中小企業でも検討されている。このことの是非はあえてこの項では論じない。今回私が提起したいのは、その会計上の処理である。少し専門的な話も含むのでなるべく平易に解説してみたい。(京都先端科学大・旭川大客員教授 増山壽一)

 現状は政府の出資であれば、資本の部に増資という形で淡々と計上され、補助金や補給金であれば、損益計算書(P/L)上は雑所得として淡々と扱われるのであろう。しかし、どうもしっくりいかないのである。税金を投入して企業の生き残りを支援するための資金が、まさしく淡々と「雑」に扱われるのはいかがなものか。

 そもそも会計とは、時代の変化に合わせて変革を遂げてきた。イタリアで生まれた初期会計簿記では、海上輸送における難破などのリスクをどう評価するかという観点から、複式簿記、バランスシートという概念を作り、資本という概念を作り出したのである。

 時代が下がって産業革命には、将来利益を生む高額な生産機械をどう評価するかの観点から、減価償却という概念を生み出し、費用の繰り延べを実現して企業経営にプラスになるような会計となった。最近では、急速に進むIT化、一般化する企業買収などを背景に、知的財産権の財産としての正当な評価、買収する際にのれん代を計上するなどの手法が整備されてきたのはご承知の通りだ。

 今回の新型コロナで、恐らく国から企業に対して、給付金や補助金、あるいは出資金という形で資金支給がなされることが世界的に一般化するであろう。その際に、公的分野からの資金供給を一括して、会計上別処理しておくことが、公的資金がどう使われたかの情報提供の観点や、公的支援の国際的な濃淡の比較などにも役立つのではないかと考える。

 このような包括した国との資金的なやり取りの見える化の努力をしておかないと、気づくと日本の上場企業のほとんどが、筆頭株主は日本銀行、増資者が政府、最大の収入は補填(ほてん)者政府ということになり、株式市場もびっくりすることが予想されるのである。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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