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下水汚泥肥料で農業に活路 国も後押しで環境負荷軽減ねらう

 下水処理の過程で生じた汚泥を農業に活用する動きが各地で広がっている。汚泥はリンや窒素を多く含んでおり、自治体は肥料に加工して流通させ、産地は肥料で育てた野菜やコメをアピール。環境への負荷を軽減できるため、国も取り組みを「ビストロ下水道」と銘打ち、イメージや認知度向上に努めている。

 「使い始めると野菜のえぐみがとれて、甘くなった」。佐賀市のアスパラガス農家、高橋恵子さん(60)が、下水由来の肥料のメリットを語った。独自で肥料にもみがらや竹のチップを交ぜて畑にまいており、アスパラガスは地元農協に出荷するほか、味が評判を呼んで東京都内の飲食店にも卸す。肥料は10キロで20円ほどとコストが安いのも魅力という。

 神戸市は水処理の水ing(東京)と共同で、汚泥から回収したリンで、肥料「こうべハーベスト」を開発。JA兵庫六甲(同市)も販売や営農指導で協力しており、2019年秋には肥料を使ったコメ「きぬむすめ」が初めて収穫された。

 このほか、秋田県大仙市ではダイコンを育てて名物「いぶりがっこ」に加工。岐阜県瑞穂市は肥料を袋詰めして、無料で農家や家庭菜園をする人に提供するなどビストロ下水道は全国で広がりを見せている。

 汚泥中のリンや窒素は肥料に欠かせない成分。日本では古くから、屎尿(しにょう)を肥料として使ってきた歴史もある。下水の有害物質は工場などで排出する際にほぼ取り除かれており、汚泥を原料にすれば焼却時に発生する温室効果ガスを抑制できるほか、輸入に頼るリンの安定確保につながる。

 ただ、下水汚泥のうち、生物由来の資源「バイオマス」として、発電向けのガスや燃料、肥料などに活用される割合は18年度実績で3割強。汚泥肥料の生産コスト低減や使い勝手の向上で、さらなる普及が期待される。

 国土交通省は17年から、下水を活用した農林水産物に「じゅんかん育ち」の名称も使い、イメージ向上を図る。農家や自治体との交流を深めようと会合も重ねており、担当者は「下水道は宝の山。連携して地域おこしにつなげたい」と話している。

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