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WTO事務局長選 「機能不全」重要性増す改革 日本、実行力を重視

 WTOをめぐっては、裁判の「最終審」に当たる上級委員会が、米国の反対で任期が切れた委員の補充ができず、紛争処理手続きが行えなくなるなど、機能不全に陥っている。新型コロナウイルスの感染拡大で保護主義的な動きも強まっており、WTOのトップである次期事務局長選びは、日本にとってもこれまで以上に重要だ。米国と中国の対立が深まる中、新たな通商政策の主導権をめぐる争いに発展する可能性もある。

 WTOなど各国の国益が衝突する国際機関では、トップである事務局長が調整役を担う。それだけに、ある日本政府関係者は「世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長のように、特定の国(中国)寄りだとみられれば問題で、透明性の確保が重要だ」と指摘する。不満を募らせたトランプ米大統領はWHOからの脱退を決めた。

 トランプ氏はWTOに関しても、中国を念頭に「最も裕福な国が発展途上国だと主張し、ルールを逃れて優遇されている」と批判。WTOでは、途上国は先進国市場に安く鉱工業品などを輸出できる一方、自国産業保護のために輸入品に対し高い関税を課すことが認められている。

 問題は、途上国かどうかを決めるのは国内総生産(GDP)といった客観的な指標ではなく、その国の加盟時の自己申告だということだ。自ら返上しない限りとどまることができるため、中国はいまだに途上国という位置づけだ。

 WTO改革には、こうした途上国に関する取り扱いの見直しのほか、デジタル経済のルールづくり▽停止した紛争解決機能の回復▽ルール違反を見逃さないような協定の履行監視機能強化-など課題は多い。だが、米中対立で難しさを増す分野もあり、次期事務局長には改革の実行力が求められる。(高橋寛次)

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