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国交省次官と静岡県知事が激論…リニア着工問題で知事「静岡を通らないルートも選択肢」

 静岡県とJR東海が対立するリニア中央新幹線のトンネル工事をめぐって、国土交通省の藤田耕三事務次官が10日、JR東海の金子慎社長と静岡県の川勝平太知事とそれぞれ面談し、9日に公表したトンネル準備工事の着工提案の詳細を説明した。金子氏は国交省の提案は「早期開業に極めて重要」と賛意を示したが、川勝氏は、準備工事とトンネル工事は一体という従来の懸念を維持し、提案を認めなかった。リニアに関する対立は国の事務方トップの次官が直接、仲介に乗り出す異例の事態となったが問題解決に向けた道のりは見通せない。

 10日午前に藤田氏は国交省内で金子氏に「当面の方策として、自然環境への影響が軽微な範囲で準備工事を進めるよう提案したい」と説明。金子氏は会談後、国交省が提案した内容を受諾する趣旨のコメントを発表した。準備工事後にトンネル本体工事をなし崩し的に進めないことや、着工後に国の有識者会議で準備工事の変更が必要と指摘された場合には応じる考えを示した。

 一方、川勝氏は国交省提案に真っ向から反対した。午後5時から静岡県庁で始まった藤田氏と川勝氏の面談は予定を30分以上超過。川勝氏は、準備工事の現場が大雨などで安全性の確保が難しいことや、大井川流域市町が準備工事とトンネル本体工事を一体と考えていることを何度も繰り返し、国交省の提案した準備工事の着工を認めない考えを明言した。

 川勝氏は、リニア開業と南アルプスや大井川の自然環境保全を両立させるためには「静岡県を通らないルートも選択肢では」などと言及したが、藤田氏は「ルート変更を考える必要はまったくない」と断言し、提案内容に絞って議論を進めた。ただ、川勝氏が大井川流域市町の反対を主な理由として提案を否定したため、藤田氏は流域市町に対して準備工事着工を認めてもらえないか説明する機会を設けることを新たに提案。川勝氏も「国交省が本気で乗り出すのはありがたい」と述べた。

 藤田氏は、準備工事着工を進める余地を残すことができた格好となったが、国交省の有識者会議の結論やその後の県の専門家部会の結論が出る時期の見通しはたっておらず、準備工事着工にこぎつけられるかは不透明なままだ。JR東海の目指す早期開業に向けてはまだ不安定要素は多く残っている。(大坪玲央)

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